金融リテラシーなぜ必要?個人の投資も社会課題解決に貢献
持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みを金融面から支える「サステナブルファイナンス」への注目が高まっています。脱プラスチックやフードロス削減など個人や企業が日々の取り組める活動だけでなく、金融の力でも持続可能な社会の実現に貢献できる仕組みが日本でも広がっています。
日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」実現を目指しています。温室効果ガスの排出量を減らしていくためには、石油由来のプラスチック製品の使用量を減らすなどの個人レベルの取り組みはもちろん、工場の生産性を維持しながら消費電力量を減少できるような技術開発なども並行して必要となります。
従来はこうした技術開発などは公的資金などを活用して進められてきました。世界レベルの環境問題が深刻になることで、個人や企業の資金も持続可能な社会の実現に貢献する企業を応援するために使うべきだという風潮が高まっています。こうした資金の流れをサステナブルファイナンスと呼びます。

例えば、調達した資金の使い道を再生可能エネルギー関連事業など環境改善効果のある分野に限って発行される債券を「グリーンボンド」と呼びます。「パリ協定」が採択された翌年の16年には世界のグリーンボンド発行額は約850億ドルでしたが、22年には5000億ドルほどに成長しました。日本国内だけでもグリーンボンドは2.5兆円以上発行されています。
サステナブルファイナンスへの関心の高まりは経済と環境の好循環を生み出します。金融機関が積極的にESG(環境、社会、ガバナンス)の観点から投資活動を続けることで、企業は資金獲得のために具体的な数値目標の設定や事業活動の詳細な情報開示に取り組むようになります。
「意志あるお金」が社会課題を解決
環境に配慮した商品を開発する企業を選ぶのと同様に、個人が金融機関にお金を預ける際にも、こうしたサステナブルファイナンスに積極的な企業を選ぶという選択ができるようになります。こうした「意志あるお金」が増えることが、社会課題の解決をより加速させます。投資などの金融活動が収益性やリスクだけを重視する時代は終わりつつあります。
サステナブルファイナンスで国内の先頭を走る企業が大和証券グループです。同社は08年にアフリカなどの発展途上国で予防接種を普及するための資金を調達する「ワクチン債」を国内で初めて販売するなど、サステナブルファイナンスの推進に取り組んできました。20年にはサステナブルファイナンスの専門チームも立ち上げました。
根岸真美氏(大和証券 サステナビリティ・ソリューション推進部長)は「欧米に後れをとっていたサステナブルファイナンスの仕組みづくりが、国内でもここ1~2年で急速に進んだ」と指摘します。「投資先に求める基準が欧州では明確。ESGの基準に照らし合わせて足りてない部分があれば欧州ではネガティブな評価につながる。国内もこれから厳格化される可能性がある」(根岸氏)
官民連携で進める脱炭素社会の実現
日本国内の企業は自動車製造などの重工業が多く、脱炭素社会の実現に向けた道のりが遠いのが現状です。少しずつでもカーボンニュートラルを目指して移行するために資金調達をしていく仕組みを官民が協働で整備する必要があります。大和証券グループは、こうした行政との連携にも注力しています。
17年、20年には環境省のグリーンボンドガイドラインの検討会の委員を務めたほか、20年の国際資本市場協会(ICMA)のアドバイザリー・カウンシルにアジアの引受業者として唯一選定されました。
根岸氏は「(官民で)横の連携をより強化することが重要だ」と主張します。業界や業種といった単位で協力しあい、ESGの視点でどう企業価値を高め、持続可能な社会のために施策を実行していくか。「今後は持続可能な社会を実現していく目的の企業のM&A(吸収・合併)も増えていくだろう」(根岸氏)

サステナブルファイナンスがより積極的になるためには、個人の金融リテラシー向上も必要になってきます。そもそも流通する資金が増えなければ、持続可能な社会を支える技術や事業活動が生まれません。
根岸氏は「ESGに関しては、今の子どもたち世代のほうが圧倒的に理解度が高い」と話します。実際に総合的な学習の授業などでSDGsをテーマとした調べ学習や、論文のテーマとして環境問題を取り扱う機会などは増えています。そこに金融という新しい軸を加えるためにも、金融経済教育が重要となってきます。
大和証券グループでは、小学生から社会人まで、幅広い世代に金融経済教育を推進してきました。投資活動は自身の将来を豊かにするだけでなく、いまや持続可能な社会を作るためにも必要な時代になりました。
根岸氏は「サステナブルファイナンスを本業として取り組み、収益も出し続ける。2030年までに資金循環の仕組み作りをするのが目標だ」と話します。
大和証券グループのサステナブルファイナンスについて

大和証券グループ
大和証券 サステナビリティ・ソリューション推進部長 根岸真美氏

