課題
・最新の情報技術を知る副教材がほしい
・生徒たち全員に、平等に「新聞を読める」環境を提供したい
・授業だけでは見えづらい、情報技術が社会に役立つことを知ってほしい
千葉県立千葉中学校・千葉高等学校は、千葉県庁に近い千葉市の中心地に建つ併設型の中高一貫校。毎年、東京大学をはじめとした難関大学への合格者を輩出し、県下の公立高校ではトップクラスの学力を誇る進学校だ。「社会で有為な人格」を育成するという教育方針のもと、質の高い授業を行い、中高を通して探究活動にも注力している。
進歩のはやい情報技術は教科書だけでは担えない
同校では2023年度の4月から、高校1年生の「情報Ⅰ」の授業に「日経電子版 for Education」を取り入れている。2022年度施行の学習指導要領によって始まった「情報Ⅰ」は、2025年の大学入試共通テストの出題科目にも設定された。情報教育の重要度が増していく一方で、「情報Ⅰ」は授業時数が少なく、専任で教える教員が少ないことも近年問題視されている。
高等学校の「情報Ⅰ」を担当する長谷川翼教諭は、情報と工業の専修免許を取得し、前任校では情報の専門学科を教えていた実績をもつ。「情報Ⅰ」の授業を高校で開始するにあたり、教科書を選定していた長谷川教諭は「検定を経てから教科書になるという現状のシステムでは、最新の情報技術に関する記述が2~3年後には古くなってしまう」という点に大きな課題を感じていた。「どのようにしたら授業の中で、生徒に最新の情報技術を伝えられるか」を模索する中で、1つの手段として考えたのが、副教材としての新聞だ。
「最初は紙の新聞も検討していたが、課題や宿題のために320人分の新聞を用意することは現実的でなかった。権利上、コピーや複製も難しいと考えていたところ、個人で利用していた日経電子版の活用を思い立った」という。複数の新聞の電子版を比較検討し「機能面でも費用面でも、日経電子版が一番使いやすい」と考えた長谷川教諭は日本経済新聞社に「授業で使いたい」と問い合わせ、その際「日経電子版 for Education」を知り、2023年からの導入に至った。

「情報Ⅰ」のタイピングやディスカッションで記事を活用
現在、長谷川教諭は高校1年生の「情報Ⅰ」の授業において、「タイピング」と「ディスカッション」という2つの活動で日経電子版を活用している。
1学期から行うタイピング練習では、スマートフォンの入力には慣れていてもキーボードは不慣れという生徒のため、生徒がタイピングに慣れる準備期間を設けた。今後、限られた時間で自分の意見を入力できるようにするという目的もあるが、新聞記事を見本に入力することで、2学期に調べる新聞記事を例示する目的もあったという。
2つめの活用が、2学期から始まる記事の要約とディスカッションだ。生徒は授業までに情報技術分野についての記事を日経電子版から探して記事を要約、自分の考えをまとめておく。授業では、6分間のディスカッションタイムを設け、2人1組になり、話し手と聞き手に分かれる。話し手はまず記事の要約を伝え、自分の意見を述べる。次に聞き手が質問、ディスカッションを行った後、話し手と聞き手が交代する。

「この時間は、自分の意見のふくらみや、他者の意見を知るだけでなく、情報Ⅰで身に付けることが求められている『コミュニケーション能力』や『情報活用能力』の育成も目的としている」と長谷川教諭は話す。「記事要約の伝え方も、ただ話すだけではなく記事の画像も一緒に見せたり、『こんな記事もあった』と別の記事を示したりすることもできる。ミニプレゼンテーションのような形で、どのように情報提供すればよいかを考え、実践する時間となっている」という。

これらの取り組みについて「課題を自宅で行うことが難しい場合は、授業で時間を取る。また最初の1~2回は、全員で流れを体験しながら取り組み、慣れてきたら生徒たち自身で進めてもらうなど、生徒たちの様子によって取り組みの方法を変えていく必要がある」と話す。
この活動において長谷川教諭は、聞き手側が意見についての感想などを記入した「聞き取りメモ」を元に評価を行う。「情報技術に関わっている記事を探すことができたか」も評価の対象になるという。

生成AIとの対話で新聞記事を活用
長谷川教諭は2023年度から生成AIを活用した学びにも取り組んでいる。教育向けに開発された生成AIのサービスを使い、日経電子版の記事について、生成AIと対話をしていく取り組みも実践した。
これは「今後、生徒たちが本格的に生成AIを使う機会が訪れた際、実際に使った経験があると0からのスタートではなくなる」という長谷川教諭の思いがある。そのため、授業の中で継続して生成AIに触れることを大切にしているという。
活用にあたっては、最初に、長谷川教諭が生成AIとの対話を実際に行って見本を示す。そして生徒には「生成AIだから正しくない恐れがある、というわけではない。人間との対話でも相手の言っていることが100%正しいかどうかはわからない。生成AIの発言を鵜呑みにするのではなく『こういう意見もある』と、1つの指針として捉えながら、自分がどう感じるかを広げていこう」と伝えている。慣れないうちはプロンプトの書き方を指導し、「逆の意見を入れたらどうなるか」など助言したうえで、2回目以降は、生徒に自由に取り組んでもらっているという。
長谷川教諭は新たな取り組みにも挑戦中だ。「人間と議論をしたときの意見の広がりと、生成AIと議論を重ねたときの意見の広がりを、それぞれデータとして収集する」として、今年度は「生成AIとの議論を先に行うクラス」と「友だちとの議論を先に行うクラス」を分けて設定している。両者の違いを分析し研究したうえで、今後の授業に役立てていく予定だという。
「なぜ情報を学ぶのか」の答が新聞にある
日経電子版を活用したメリットについて、長谷川教諭は「教科書の内容よりも、実際に社会で情報や技術がどう使われているかがわかりやすい」ことを挙げている。「『何のために授業をやっているのか』は、知識だけの授業では見えづらい。『百聞は一見にしかず』ではないが、私が100文字話すよりも、生徒自身が新聞記事で画像などとともに見る方が理解は深まると感じている」と語った。
生徒全員が「平等に、新聞を読むことができる」環境設定を得られたことも大きいという。「紙の新聞が一家に一部ある時代ではなくなっており、経済的に購読できないような家庭もある。電子版であれば、学校のWi-Fiを使い、休み時間や朝の時間に調べることもできる。通学時間などのスキマ時間をうまく活用するなど、場所を取らずに学習に活用できる」と話す。また記事の選択について、生成AIなど「情報技術」に直結する記事を選ぶ生徒も多いが、中にはサブカルチャー関連の記事をピックアップした生徒もいるなど、様々な関心分野の情報技術との関連性が自然と見えてくることも興味深かったという。
電子版を読む習慣によって生徒たちのアンテナが広がる
長谷川教諭にとって日経電子版は副教材であり、活動に役立つツールである。「『情報Ⅰ』では授業づくりのツールとしてだけではなく、今回のようにタイピング練習やディスカッションといった、ちょっとした活動をしたいときに効果的に使うことができた。ひとつひとつの活動は短時間ではあっても、積み重ねていけば授業時間にも匹敵し、生徒にとっても大きな経験となった」と、その有用性を語った。
そして日経電子版の記事を読む習慣がつくことで、社会情勢など情報技術分野以外のニュースを自然と目にする機会が増えることも、付随した効果だという。「まったく新聞にふれていない高校生に比べると、生徒たちのアンテナが広がっている。また、SNS等で口語的な文章にしか触れていないと、表現の広がりが少なくなってしまう。整理された文章を目に入れつつ、知識も入れつつということができる点も、日経電子版を使った意義があったと感じている」とその手応えを話した。
千葉県立千葉中学校・千葉高等学校
学年:高校1年生
教科:情報Ⅰ
授業者:情報科長谷川翼教諭








