課題
・物事を多角的かつ多面的に捉える力を身につけてほしい。
・45分という限られた授業時間の価値を最大限に高めたい。
・必修科目となった「地理総合」において、教員・生徒ともに学ぶことそのものを楽しんでほしい
教室の窓から国会議事堂を望む、東京都心の真ん中に位置する東京都立日比谷高等学校。創立140年の歴史を誇り、世界でも活躍する多くの著名人を輩出してきた「知の日比谷」として名高い進学校だ。同校では「物事の本質に触れる楽しさ」を大切にし、地理と公民の授業において日経電子版を活用している。
地理歴史科を担当する小宮山幸男主任教諭は、自身も学生時代から日本経済新聞を通じて地理を学んできたという。今回は高校1年生の授業を見学し、日経電子版導入の背景や活用法、そして2022年に必修化された地理総合の教え方・学び方についてうかがった。
豊富なデータを使い、答えのない答えを見つけ出す力を
「私自身、学生時代から日経を読んで地理を学んできました。だから今、教科書を見なくても授業ができるんです」と語る小宮山主任教諭。数ある新聞の中で日経を選択したのは、データの豊富さが理由だったという。「地理は論理的思考力が求められる教科です。論理的に語るには、事実としてのデータが不可欠。その点で、日経電子版は一人では絶対に調べられないような膨大な量のデータがストックされています。生徒たちにはしっかりしたデータをもとに、答えのない答えを見つけ出す力を養ってほしいです」

今回見学した高校1年生の地理総合の授業のテーマは、「地形」。凸凹のある地球の様々な高度分布や、地殻変動・変動帯について学ぶ。授業は教科書のキーワードをなぞるのではなく、「なぜそうなるのか?」を多角的に問い、思考を促すスタイルだ。
「例えば、世界最高峰の山は?と聞いたら、みんなエベレスト(チョモランマ)と答えられるし、最も低いところは?と聞くとチャレンジャー海淵と答えられる生徒もいるんです。では、その基準がどこにあるのか考えてみましょう。海面からの標高では確かにエベレストが最高峰ですが、世界の海面の基準は場所によって異なります。地球中心部からの距離、と考えると、答えはエベレストではなくなるんです」このように「基準」を揺さぶる問いかけを通じ、生徒は一つの視点にとらわれない思考を学んでいく。
地理総合の初回の授業では「多角的に見て、多面的に捉えるように」と伝える。今回見学した地形の授業でも、生徒たちがこれまでに覚えた「答えは1つ」という前提を、自ら問い直すような姿が多く見られた。「多角的視点を入れるための一つの勉強が地理なんだよ、と伝えています。自分の視点からだけではなく、友達の視点など、世界のさまざまな視点・角度から、世の中を多面的に捉えてほしい。だから、授業ではいろんな基準を崩していきます」
生徒の集中力を引き出す「再現不可能な授業」

授業を受ける生徒たちの目は真剣そのものだ。クラス全員が教壇に立つ教師の問いを聞き、熱心に手元の資料集をめくり調べている。
「教科書に載っていることをなぞっているだけだと思われたら、地理の授業に興味を持ってもらえなくなります。だから私は授業で、“今”のことを話すのです。“今”の話をすることで、授業は今しか聞けない価値あるものになると考えています」

生徒たちに配られたのは、見出しのみ書かれた1枚のプリント。話を聞きながら、生徒たちはどんどんメモを取っていく。プリントは空欄補充式でないため、よそ見をしていたらあっという間に置いていかれてしまう。「パワーポイントも最小限の情報に留めています。全部こちらが用意してしまうと、教科書や資料集を使わずキレイなままになってしまいますからね。自ら学習成果を残すことが、将来仕事でメモをとったり体で覚えたりすることに繋がると思います」
QRコードで学びを拡張――日経電子版の活用法
生徒自ら考えて学習成果を残すことを大切にする授業だからこそ、パワーポイントの情報は最小限。その中で掲出されたのが、日経電子版の関連記事へ飛ぶQRコードだ。これは、1コマ45分という進学校の中では授業時間が短い日比谷高等学校ならではの工夫である。

「45分という限られた授業時間で、伝えなければいけないことや考えて欲しいことがたくさんあるので、調査・探究活動まで時間を取るのは難しい。そのため、パワーポイントや配布プリントにQRコードを載せて、後でも読めるようにしています」あえて記事全部を貼り付けるのではなく、図表やタイトルのみ出して後で読みたくなる工夫も、効果的なテクニックだ。

今回の授業では、日経電子版の「大陸なぜ動く?100年越しの宿題 理論検証へ掘削」(2018年1月21日付)という記事を紹介。「地球全体でプレートが50枚以上に分かれているとする研究があること、マントルが海洋プレートを引きずって動かしている証拠が見つかったことは、私も日経で初めて知りました。教科書にない、“今”のデータを伝えると、生徒も食いついてくれるのが分かります」
今までも、様々なテーマで日経電子版の記事を活用してきたという小宮山主任教諭。地図学習の際には、あえての地図の常識が覆る記事も紹介した。普段見ている欧米を世界の中心とした地図とは異なり、南北が逆転した地図も存在する。まさに多角的な視点で多面的に世の中を捉えるきっかけになる。
「地図記号の学習では温泉記号の変遷に関する記事を見せました。地図記号と検索してこの記事がヒットしたときには、嬉しかったです。クイズ形式にして、正解は後で記事を見てねと伝えたら、読みたくなりますよね」
東京都立日比谷高等学校
学年:1年生
教科:地理総合
授業者:地理歴史科 小宮山幸男主任教諭








