課題
・タブレットを活用した学習を行いたい
・教科書の枠を超えた学習を行いたい
・筋道を立てて意見を導き出す論理的思考力を育成したい
千葉県立柏高等学校は、近年人口増加が続く柏市に位置する高等学校だ。各学年には普通科7クラス、理数科1クラスがあり、全校で24学級、約960名の生徒が勉学、部活動、学校行事に励んでいる。平成27年度からは、千葉県教育委員会より「進学指導重点校」に指定され、文系・理系を問わず、県内各地より教科指導や進学指導に強みを持つ教職員が集まり、生徒の進路実現に日々力を注いでいる。
地歴公民科と総合的な探究の時間を担当する澤田俊一教諭は、「本校の生徒たちは、将来社会の中でリーダーシップを取っていく人材になると思っています。だからこそ、教科書の枠を超えて、現在の社会がどうなっているのかを考える習慣が必要だと感じていました」と語る。さらに、同校では2023年度に生徒全員にタブレットが導入されたものの、授業で十分に活用できていないという課題があった。「今の社会を知る」というテーマと、「タブレットの活用」という課題に対応する一歩として、日経電子版を導入したという。
気になる記事を、30秒でプレゼン。短時間だからこそ効果は高い
日経電子版を取り入れた公共の授業では、授業の冒頭に「ニュースプレゼン」が行われている。「2人組になって、じゃんけんで勝った方か負けた方が相手に対してプレゼンを行います。時間は30秒。スクールタイマーで時間を設定し、きっちりと計っています」と澤田教諭は説明する。
この30秒というのが、さまざまな効果を得られる秘訣だという。まず1つ目の効果は、プレゼン能力の向上だ。「最初は時間内に終わらない生徒も多くいましたが、今では30秒プラスマイナス5秒くらいで話せるようになっています」生徒からも、「文章を要約して相手に伝えるプレゼン能力がついてきた」という声があるそうだ。もう1つの効果は、授業へのスムーズな導入である。「冒頭に30秒ニュースプレゼンの時間を設けることで、『今から公共の授業が始まる』と自然とスイッチが入ります。授業の時間は50分間で、教える内容も多いので、30秒でプレゼンというのが授業の進行に支障がなく、さらに休み時間との切り替えをスムーズにするのに丁度良い時間なんです」授業ではグループワークを行うことも多くあり、冒頭のペアワークがウォーミングアップとしても機能しているという。
2年生は週に2回公共の授業があり、プレゼンの時間が足りないと感じている生徒からは、「週1回、1分間にしてはどうか」という意見もあったそうだ。しかしながら、澤田教諭は「公共の授業は1年間で50数回あります。週2回、30秒行えば、自分が語ったニュースが50本、友達から聞いたニュースが50本、計100本ほどが自分の中に蓄積されます。これが30秒プレゼンのメリットだと感じています」と短時間で行うことのメリットを語る。

生徒から寄せられた感想の一部
「自分が興味ある情報しか取り入れなくなり、知識が偏っているような気がしていたが、日経電子版でニュースプレゼンをするようになり、色んな分野に目を向けるようになった」 「ニュースプレゼンは人によって違う視点を得られるのが良い」 「それぞれの視点でニュースを選んで共有することは、自分の視野を広げることに繋がると思う」
2年生では進路選択にニュースを活用
過去に三期にわたり文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を受けていたという実績を持つ同校は、理数系の進路を希望する生徒が半数を占める。このような生徒は、ニュースプレゼンでも医療系の記事をピックアップすることが多いという。
一方で、地域との関わりに興味関心を持っている生徒も多く、社会学部や経済学部への進学を目指し、町おこしや行政に携わりたいと考える生徒もいる。そうした生徒たちは、日経電子版を活用し、社会で今起きていることをタイムリーにキャッチアップしている。
授業では、自分の希望する進路に関するテーマを考え、探究活動を進めている。1月にはクラスごとの発表会が行われ、優秀者は体育館でコンテストに参加する。「受験期になれば、どうしても暗記などの試験対策に時間を費やすことになりますが、進路をじっくり考える2年生の時期に、『大学で何を学びたいのか』『どんな先生と出会い、どんな経験をしたいのか』を考えることが大切です。その答えを見つけるために、アンテナを張り巡らせて自ら深く探究する。そのツールとして、日経電子版が役立っていると思います」

「脱詰め込み型」の大学入試対策に活用
進学校として見逃すことができないのが、近年の大学入試の傾向だ。総合型選抜・学校推薦型選抜が増加し、学力だけでなく、幅広い活動やリーダーシップ、コミュニケーション能力なども評価されるようになってきた。また、学力テストが多様化し、従来の「知識の暗記」だけでは太刀打ちができず、思考力・判断力・表現力を問う問題が増えている。
このような変化に対応する手段の一つとして、澤田教諭は日経電子版要約を挙げる。「共通テストでは、ボリュームのある文章を短時間で解く必要があります。そのために必要なのは、きちんとした文章を日頃から読むトレーニングをすること。さらにニュースプレゼンをとおして、共通テストに必要な大量の情報から筋道を立てて考えて要約するという能力が鍛えられています」従来であれば大学生がゼミで取り組むような内容だが、週に2回の取り組みで次第にできるようになってきたという。
また、小論文対策において「書く力」と「読む力」も育っていると感じている。近年のSNSの普及や読書量の減少などの影響から、長い文章を読むことや、自分の考えを書くことに抵抗感を持つ生徒は少なくない。澤田教諭の取り組みをきっかけに、3年生の小論文対策を担当する国語科教諭の間でも日経電子版の活用が広がりつつあるという。実際に「知識が増えて自分の文章に説得力を与えられるようになった」、「文章を読むのが早くなった」という声もある。「新聞を読んで要約するという勉強法は昔からありますが、物事を論理的に整理し、感想ではなく意見としてまとめる能力は、入試だけでなく将来社会に出てからも重要です」と、澤田教諭は強調する。
要約と感想だけで終わらせないために、ニュースプレゼンでピックアップするニュースの内容には簡単なルールを設けている。それは、スポーツや芸能など「すごい」「おもしろい」といった感想で終わるニュースはNGということ。「例えば『大谷選手がホームランを打った』というニュースだと『すごい』という感想で終わってしまうのでNG。『大谷選手の経済効果』など、社会に繋がる内容を選ぶように指導しています」要約して自分の意見を述べるというのは、一朝一夕でできるようになることではない。だからこそ、受験期に入る前の2年生までに、この論理的思考能力を鍛えていきたいと澤田教諭は考えている。

視野を広げ、今の社会に疑問を持てる人材になってほしい
30秒のニュースプレゼンをきっかけに、進路の探究活動や大学入試対策まで、幅広く日経電子版を活用している同校。導入から1年だが、今後は教員からではなく、生徒から活用方法が展開されることもあるだろう。
澤田教諭は、「生徒たちからは、日経電子版を通して、色んな分野に目を向けるようになったと前向きな声を聞いています。本校の生徒は、社会に出たらリーダーシップを取って活躍できる人材だと期待しています。新聞を使って要約する力、論理的思考能力を高めて、リアルな世の中を知り、そして疑問を持てる人になってほしいと考えています」と語っていた。
千葉県立柏高等学校
学年:2年生
教科:公民科・公共
授業者:地歴公民科・総合的な探究澤田俊一教諭








