課題
・学生時代に、正確で信頼できる情報に日常的に触れる習慣を身につけてほしい。
・紙の新聞になじみの無い生徒に、より親しみやすい媒体を通じてニュースに触れてほしい。
・将来に向けて、自分でも気づかなかった興味や関心と出会う経験をしてほしい。
滋賀県立河瀬中学校・高等学校(彦根市)は1983年に高等学校として開校、2003年には中学校を併設し中高一貫教育校となった。全学年の教室にICT機器を設置し、全教員・全生徒にタブレット端末の活用を促すなど、デジタル教育にも積極的に取り組んでいる。2024年には文部科学省がデジタル教育の拠点と位置づける「DXハイスクール」に指定され、ICTを活用した探究的な学びの環境整備をさらに進めている。
今回は、同校で日経電子版の活用をけん引する図書館司書・森本春菜さんに、導入のきっかけや狙い、実際の授業での活用方法についてうかがった。
調べ学習で感じた課題。学生時代に新聞記事に触れる習慣をつけてほしい
図書館司書として、探究学習の際には生徒の指導も行っている森本さん。高校1年生の「総合的な探究の時間」で、生徒の情報収集に違和感を覚えたことが、日経電子版の導入を検討するきっかけとなったという。
「『総合的な探究の時間』で生徒達の情報収集の様子を見ていると、個人ブログも含めインターネット上での情報を手当たり次第に検索している状況で、大きな課題と感じました。常々、生徒達には学生時代に新聞記事など、正確な情報に触れる習慣を身に付けて欲しいと考えています。図書館には紙の新聞も置いていましたが、数には限りがあり、もちろん図書館に足を運ばないと読むことができません。もっと気軽に、信頼できる情報源に触れられるようにできないかと考えていたところ、他校で日経電子版を授業で活用している事例を知りました。早速職員会議で提案、導入が決まりました」
新聞をより身近に感じてもらい、正しい情報の収集法を学んでほしいという思いが、日経電子版の導入につながったのだ。
高校1年生の探究活動で自分の興味・関心をマンダラートでビジュアル化
森本さんが担当する高校1年生の「総合的な探究の時間」では、学期ごとにステップを上げていく指導を行っている。
「2学期から始まる本格的な探究活動に向けて、1学期では自分が何に興味をもっているのかを探る活動からスタートします。その活動の一つが『新聞を興味読み!』です。生徒は日経電子版「Ask! Nikkei」で気になるキーワードを元に質問を打ち込み、日経電子版の記事を基に作成された質問に対する回答を読みます。そして、その回答に使われた記事から興味のあるものを読み、少しずつ自身の興味・関心を洗い出していきます」
「新聞興味読み!」をおこなう前に、「マンダラート」という思考の整理術を使って自らの興味・関心を視覚化する。中央に「自分」を置き、自分を構成するキーワードを記入。さらに、そのキーワードから連想される言葉を広げていくことで、自分だけの関心マップを作り上げる。完成したマンダラートはGoogleクラスルームに提出、次の「新聞興味読み!」で活用する流れだ。

授業の流れ:
1.マンダラートで絞り込んだ興味・関心を「Ask! NIKKEI」に質問する
2.得られた回答をざっと読んでみて、気になったキーワードを書き出してみる
3.回答ページに表示される「基になった記事」から一つ選び「見出し」「記事の概要」「自身の感想」を「新聞を興味読み!」ワークシートに記入
4.グループ内で自身のワークシートの内容を互いに発表する

「Ask! NIKKEI」を授業に導入した理由について、森本さんはこう語る。
「新聞記事を読むことに慣れていない生徒には、まず回答で内容をざっくりと把握してから、基になった記事を読むよう指導しています。そうすると記事を読むことのハードルが下がって、内容もずっと理解もしやすくなります」
生徒に最初から高いハードルを設けるのではなく、段階を踏んで徐々に新聞に親しむ仕組みにすることで、無理なく新聞に親しみ、正しい情報に触れる習慣を身につけさせているのだ。

高校2年生の探究活動では仮説を立てるために「Ask! NIKKEI」を活用
高校2年生では、2~3人のグループを組み1年間かけて探究活動に取り組む。まずテーマ決定と仮説立てのプロセスで「Ask! NIKKEI」を活用する。生徒は自身の興味・関心をもとにリサーチクエスチョンを「Ask! NIKKEI」に投げかけ、得られた回答から仮説を立てていく。そして仮説を裏付けとなる記事を「基となった記事」からピックアップし、資料として整理していく。

長期的な取り組みにおいて森本さんが重視大切にしているのは、「独りよがりにならず、人に伝える価値のあるテーマになっているかどうか」だ。「1年間かけて取り組むテーマですから、簡単に答えが出てしまうようでは意味がありません」と森本さんは語る。
「日経電子版を読むことで様々な社会問題に出会えます。生徒には自分の視野を広げて、時間をかけて探究できる深いテーマを見つけてほしいと考えています」
実際、生徒たちは新聞記事をきっかけに多様な仮説を立てている。たとえば、言語に関心のある生徒は「英語話者は日本人の英語を聞いて、どのようなときにわかりにくいと感じるか」というリサーチクエスチョンを設定。
「Ask! NIKKEI」の回答をもとに、「日本人の英語は発音が少々異なっても、文脈で理解されることが多い」と仮説を立てた。仮説をもとに文献調査やインタビューを進め、最終的には校外の人達も含めたプレゼンテーションを実施。執筆した論文は、学校の図書館に保管、生徒達に共有される。
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【モーダル】
教育現場での生成AIの活用については、学校ごとに方針が異なるのが現状だ。ICT先進校である河瀬中学校・高等学校では、全生徒の保護者の同意を確認した上で、「Ask! NIKKEI」やChatGPT、画像生成AIなどを積極的に活用している。
生徒には日経電子版を事前に各自で登録しておくよう指示したが、ほとんどの生徒がスムーズに登録を完了したという。「探究の授業は複数の教員でフォローします。教員には事前にマニュアル資料を配布し、生徒用にもスライドを用いて分かりやすく説明するよう心掛けています。ただ『Ask! NIKKEI』は操作がシンプルなので、生徒たちは自発的に使いこなしているようです」
新しい技術は正しくサポートした上で、生徒の主体性も重んじ、積極的に取り入れて活用するのが、河瀬中学校・高等学校のスタイルだ。
生徒が「日経電子版を楽しんで使っていること」を実感。日頃から「自ら問いを立てる」習慣を身につけてほしい

日経電子版を授業に導入して最も実感しているのは「生徒が楽しんで取り組んでいること」だと森本さんは語る。
「以前は高校1年生の授業で紙の新聞を1人1部ずつ配り、興味・関心のある記事を探すよう指導していました。ただその場合、情報量が『その日の新聞』に限られるため、興味ある記事が見つからなくても適当に選んでみたりするケースが少なくありませんでした。その点、日経電子版はリアルタイムのニュースだけでなく、過去の記事も豊富にストックされています。記事検索や『Ask! NIKKEI』など機能も充実しているので生徒たちは自分の本当に興味のある記事にたどり着きやすく、慣れない紙媒体に比べて心理的なハードルも低いため、楽しそうに取り組む様子が印象的でした」
「日頃から疑問を持ち、自ら問いを立てる習慣を身につけてほしいと考えています。検索エンジンを使うのと同じぐらい日常的な感覚で、電子版、そして『Ask! NIKKEI』を使って情報を調べ、深めていく力を育んでほしいですね」
日経電子版を活用した学びは、生徒の好奇心や主体性を引き出し、より深い気づきへとつながっている。心から興味のあることを、楽しみながら探究した経験は、生徒の未来をさらに広げることだろう。
滋賀県立河瀬中学校・高等学校
学年:高校1年生・2年生
教科:総合的な探究の時間
授業者:図書館司書森本春菜








