ジジロン(時事論)シートで鍛える!短時間要約力

広島県立広島国泰寺高等学校

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ジジロン(時事論)シートで鍛える!短時間要約力

課題

・生徒が「総合的な探究の時間」で課題研究に取り組むうえで、テーマ設定や解決策のヒントを得るために、信頼できる情報を活用したい。
・自分の意見を言語化する習慣を身につけ、生徒の時事感覚・論理的思考力・表現力を養いたい。
・情報があふれる現代において、学生時代から新聞を読む習慣を身につけてほしい。

 1877年(明治10年)に創立し、県内屈指の伝統校として知られる広島県立広島国泰寺高等学校。平成26年度まで3期13年間、「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定されており、国際的に活躍する科学技術者を育成するための、充実した教育環境を備えている。ワールドワイドラーニングコンソーシアム構築支援事業(WWL)の拠点校として「平和」をテーマとした独自の探究活動やICTを活用した進路支援にも力を入れており、毎年約7割の生徒が国公立大学に合格する進学校だ。

 今回は、英語科および総合的な探究の時間も担当されている上元真弓教諭に、同校での日経電子版の導入背景とその活用法、探究学習のカリキュラム変更についてお話をうかがった。

英語科 上元真弓教諭

「確かなデータ」を扱う習慣を。新聞記事を身近に感じる環境をつくりたい

 「総合的な探究の時間」で、テーマや探究課題の解決策のヒントを探すためのツールとして、日経電子版を導入したという広島国泰寺高等学校。

 「もともとアンケートデータやインタビューを活用して探究活動を行っていましたが、“根拠のある確かなデータ”として新聞記事を取り入れたいと思ったことがきっかけです」と、上元教諭は語る。

 「新聞を読んでほしい」という思いを抱く教育現場は多い。しかし、実際には生徒たちの“紙離れ”は進んでおり、新聞を購読していない家庭も少なくない。学校から家庭への連絡もペーパーレス化が進み、アプリでの配信が主流となりつつある。

 「紙の管理が苦手な生徒も増えています。SNSで興味があることが流れてくる時代ですから、大人が環境を作らなかったら、生徒が自ら新聞を手に取ることは少ないでしょう。だからこそ、誰もが気軽に新聞を読める環境を整えたいと考えました」

 荷物の多い生徒たち。物理的な負担も課題だった。

 「検索機能や、気になる記事を保存できる『Myニュース』などの機能も便利で、新聞に馴染みのない世代でも使いやすいと感じています。生徒たちの通学用リュックは教科書でいっぱいですが、荷物を増やすことなく、いつでも新聞が読める環境が整ったのはとても良かったです」

新聞記事を活用した授業の実践。1年生より主体的な学びを促進

 広島国泰寺高等学校の生徒たちは、全学年で日経電子版を使っている。

 「1年生では地理総合の授業で新聞記事を紹介し、それをもとに意見を考えさせています。過去には関税に関する授業で、トランプ関税の記事を見せました。トランプ大統領の目的は何なのか考えたり、それを踏まえて自由貿易と保護貿易のどちらが良いのかをワークシートに意見としてまとめさせたりしました」

 教科書の内容と、リアルに起きていることを結びつけることで、生徒の興味を高め、自分の意見を言語化する力を育てるねらいだ。

 2年生になると、個人での研究が始まる。テーマは、生徒自身が普段から気になっていることや、記事をきっかけに気になったことなどさまざまだ。

 「2年生の探究の授業では、1クラス40人につき、4人の先生がついて丁寧に指導を行っています。

 「たとえば、“教員のブラックな働き方はどうすれば改善するのか”というテーマを選んだ生徒には、『それは高校の先生?中学の先生?』『部活の顧問をしている先生にする?』といったように、テーマをより明確にするためのアドバイスをしました。最近では、生徒・教員・保護者にアンケートを配信し、自らデータを集める生徒も増えています。1年生は、そのアンケートに回答することで、上級生の研究内容や取り組み方を知り、翌年以降の学びのイメージをつかむことができているようです」

1年間かけた探究結果は、卒業生やアメリカの姉妹校の生徒を招いた発表会の場でプレゼンテーションを行う。写真は英語で発表する生徒

3年生の学びを深める「ジジロンシート」による新聞習慣

 日経電子版を最も活用しているのが、3年生だ。「総合的な探究の時間」の冒頭5~10分間を使って日経電子版を読み、気になった記事の要約などをGoogleスプレッドシート『ジジロン(時事論)シート』に記入する活動を行っている。

 『ジジロン(時事論)シート』に、50字以内の記事要約、自分の意見、気づいたことや疑問などを生徒に記入させる帯活動を実施しています。時事問題を知り、自分の意見を形成する力を養うことは、探究活動や小論文対策にもつながっていると思います。実際に、次第に慣れてきて短時間で要約できるようになっていますね」と、上元教諭は話す。

 また、生徒のモチベーションを高めるために、活動が時事的感覚・論理的思考力・表現力の向上に役立つことを常に伝え、できるだけ自分の進路に関連する記事を選ぶよう促しているという。

3年生で使う「ジジロンシート」の使用例。親しみやすくするために、イラストや名前もオリジナルで作成した

 「世界でどんなことが起きているのかを知ることで、生徒には視野を広げてほしいと思っています。最初は新聞を読むハードルが高く感じられても、毎週1回続けることで、自然と習慣になっていきます」

 生徒が選ぶ記事はさまざまだ。最近は選挙権年齢の引き下げもあり、参院選など選挙に関する記事を選ぶ生徒も多い。「医療」や「食」など、自分の興味ある分野の記事を選び、「Myニュース」機能を使って関連記事をフォローする生徒や、大学入試の面接対策として、進路に関する記事を意識的に追う生徒もいるそうだ。

令和7年度よりカリキュラム変更。段階的に深く研究できる授業に

 令和7年度より、1・2年生の探究学習のカリキュラムを変更した広島国泰寺高等学校。以前は1・2年生ともに「総合的な探究の時間」が週に1時間ずつで、2年生はさらに「グローバル平和探究」という必修科目があった。平和な世界の実現に貢献できるグローバル人材を育てたい、という同校の特色ある授業だ。

 現在は、「グローバル平和探究」の授業を1年生で受け、2年生は「総合的な探究の時間」を週に2時間に拡充している。

 「今までは2年生が外部取材に出かけるなど、じっくり調査を行う時間を取りづらいのが課題でした。1年生の段階で『グローバル平和探究』を経験することで、パソコン操作にも慣れ、翌年以降の探究活動にも深みが出てくると思います」と、カリキュラム変更の狙いを語る。

 生徒が探究テーマを考える際のヒントを得られるよう、毎回の授業で新聞記事を読む活動を設けることも検討している。

 「4月から6月までの間に新聞に触れる時間を継続的に設けることで、読む習慣が自然と身につくのではないかと考えています。自分の興味がまだはっきりしない生徒にとっても、進学を希望する学部の教授がどのような研究をしているのかを知ったり、気になるキーワードをフォローしたりするなかで、関心のあるテーマを見つけていってほしいと思います」と語った。

各教科へ広がる活用の可能性。教科書の枠を超えた学び方

 「総合的な探究の時間」にとどまらず、今後はさまざまな授業で日経電子版を活用することが期待されている。

 「たとえば、地理総合の授業では、関連する新聞記事を取り上げることで、なぜその内容が話題になっているのか、どんな意図や思惑があるのかを考える時間が設けられています。実際に、各自の意見をプリントにまとめ、同級生同士で話し合う授業も行われているようです」と上元教諭は語る。

 今後は他教科への横展開も視野に入れているという。「たとえば家庭科で献立を考える際に、栄養に関する記事を読む。あるいは介護に関する授業であれば、高齢者の事故や、介護に携わる人の負担・人材不足の問題など、関連する記事を調べて紹介し合う授業も考えられます」リアルタイムで取り上げられるニュースを授業内で活用することで、生徒の興味関心が広がり、教科書の枠を越えて、より深い学びへとつなげることができる。

「日本の健康課題と保健師活動変遷」について発表する生徒。自らの興味関心から生まれた探究内容は、個性豊かだ

 新聞に触れる環境をつくり、習慣化したとき、時事感覚・論理的思考力・表現力が自然と養われる。一度身についた習慣や力は、生徒の未来への可能性を広げてくれるだろう。今後も教科の枠を越えた学びを通じて、生徒一人ひとりが自分の興味を深め、未来に向けて確かな力を育んでほしい。

広島県立広島国泰寺高等学校

学年:1~3年生
教科:英語
授業者:英語科上元真弓教諭

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