課題
・高校で履修する公共を中学3生生に特例として設置、社会理解に役立つ、適切な教材が必要
・毎日のニュースや経済の動きが、自分の生活や将来に直結するものだと認識してほしい
東京都新宿区にある成城中学校・成城高等学校は、2019年度入試から完全中高一貫校へと移行した私立の男子校だ。1885年に創立、2025年で140周年を迎える同校では「社会に有為な人材を育成する」という建学の精神のもと、文武両道の実践を通じて、知徳の優れた男子リーダーの育成を目指している。
高校入試がない完全中高一貫校の成城では、中学3年次・高校1年次をキャリア教育の大切な時期と考え、社会に開かれた教育を進めている。
「生徒には毎日、日経平均株価や米ダウ平均株価を見るように伝えています」と語るのは地歴公民科担当の有阪喜一郎教諭。今回は中学3年生の授業を見学した後、有阪教諭に授業の進め方のねらいや日経電子版の活用について話を聞いた。
義務教育のうちに、経済の基礎知識を身につけることの大切さ
同校では一般的に高等学校で履修する公共の授業を、特例として中学3年生に設置、実施している。有阪教諭は、理由を次のように語る。
「創立以来、本校が大切にしているのは『文武両道』です。生徒が部活動や課外活動を充実させられるよう、授業は6限まで。決められた枠内で、より効果的に授業を進めるために、中学3年生の公民分野と高校の公共を合わせ、中3で高1の授業内容も学べるようにしました」
しかし、主権者教育や金融教育など、中学3年生にとって身近に感じにくいテーマを学ばせるのは容易ではない。社会や経済の動きを日常的に感じることができる教材として、日経電子版が活用されている。
有阪教諭は生徒たちに毎日、日経平均株価、米ダウ平均株価、そして円・ドル為替相場を日経電子版で確認するよう指導している。
「日々の天気予報のように、ふだんから日経平均や為替相場を眺めて欲しいと考えています。日経電子版は、世界の政治や経済の動向をつかむのに、とても良い教材です。少しでも選挙や政策について関心を持って、社会の動きを”自分ごと”として考える力が育って欲しいと考えています」と有阪教諭は意図を語る。
「新聞を購読する家庭が減っている今、手軽にアクセスできる日経電子版を通して社会を学んでほしい。近年は入試で政治・経済を選択できない大学・学部も増えているようですが、だからこそ義務教育の期間に、社会について学ぶことができる仕組みを作ることは、生徒たちの将来にとってとても重要です」
身近に感じにくい経済を理解するため様々に工夫。
クイズ形式で盛り上がりつつ復習も
難易度の高い内容をわかりやすく伝えるため、授業では様々な工夫もしている。この日の授業では、有阪教諭はまず重要キーワードを次々と板書していった。小さな政府、大きな政府、見えざる手、不良債権、失われた10年、金融危機、など。日本のバブル崩壊と長期不況を世界史も紐解きつつ、ひとつずつ解説していく。生徒は有阪教諭の話す内容も含め、熱心にノートに書きとっている。

中学3年生には難易度の高い内容だが、有阪教諭は生徒の興味を引き出す工夫を随所に取り入れている。たとえば「サブプライムローン」について解説する際、生徒に「sub」や「prime」がつく英単語を生徒に尋ねた。
生徒は”subculture”、”subtitle”といった単語を答えながら、「サブプライムローン」が「信用力の低い借り手にお金を貸し付ける住宅ローン」であると自然に理解していった。「なるほど」と頷く生徒の姿が印象的な、授業の一コマだった。
授業の最後には、オンラインクイズプラットフォーム「Kahoot!」を使って、その日の内容をクイズ形式で復習する。有阪教諭がテンポよくクイズを出題すると、それまで熱心にノートを取っていた生徒たちがさらに活気づく。
クイズは各国の指導者を写真から選んだり、高度経済成長期の出来事を時系列に捉えたりするものなどバラエティに富んだ内容だ。中には日経の記事から出題される問題もあった。
「Kahoot!」では数秒以内に素早く回答を選択しないとすぐに次の問題が始まるため、考える時間は少ない。生徒たちは時折歓声を上げながらクイズに取り組む。「昨日ニュースで見たのに思い出せない!」と悔しがる生徒もいた。

年5回の考査試験には日経電子版の記事を題材に
1年に5回実施する公共の考査試験では、日経電子版の記事が題材として使われている。

「日経電子版を日常的に見ている生徒ほど解きやすい問題ですので、ニュースを読むことが自然と習慣化される効果はあると思います」
生徒たちに「毎日、日経平均株価をチェックする」という課題を出すにあたり、導入の授業では日経平均の定義や、為替相場の基本を簡潔に解説したという。
「最初の授業で円高・円安がそれぞれ日本にどのようなメリット、デメリットがあるのか、まずはそうした基本的な知識を伝えました。基礎を理解した上で毎日数字を追っているので、トランプ関税や対米投資のニュースに合わせて為替がどう動いたのかと問いかけても、ちゃんと答えてくれていましたね。日経平均が今いくらくらいで、最近は円高、円安どちらなのか、おそらく生徒はみんな答えられるはずですよ。日経平均が“未知の世界”ではなくなって、正に期待していた通り、天気予報をチェックする感覚で捉えてくれているのではないでしょうか」
中高一貫の3年目
キャリアを見据える時期に将来としっかり向き合う
同校では2022年より、グローバル・キャリア教育を担当する部署を設置してキャリア教育を推進している。「学びのイノベーション・プラットフォーム(PLIJ)」の特別会員として企業や大学との連携も強化、生徒が社会を知り、キャリアを考えるきっかけ作りを仕組みとして整えている。
「本校は高校受験がないため、中学3年生は将来を考えるのに最適な時期でもあります。だからこそその時期にキャリア教育をしっかりおこない、自分の将来と真剣に向き合ってもらえるよう、取り組んでいます」
キャリア教育の一環としておこなっている生徒による企業訪問では、インターネット関連企業や業務システムを扱う企業など、さまざまな業種の現場を見学してきた。訪問の事前学習として、必ず日経電子版で企業情報や株価を調べるようアドバイスしている。
「訪問する前には、相手の企業についてきちんと調べておく必要があります。企業がいまどのような状況にあり、株価や業績がどう推移しているのかを簡単に調べられるのは、日経電子版ならではの良さですね。最近はしっかり情報を集めてから訪問しているので、より意義深い企業見学になっていると感じます」
「新聞の知識」が未来の資産に。正しく判断できる大人へ
あらためて、なぜ生徒たちに新聞記事に触れてほしいのか、有阪教諭に尋ねてみた。即答で返ってきた言葉は「将来の選択肢を広げ、正しく判断できる大人になるためです」。
「私が中学生、高校生だった頃、学校で経済や金融について詳しく教わることはほとんどありませんでした。同世代では今でも“経済のことをよく知らない”という人が少なくないのではないでしょうか。最近は書店の数が減ったり、紙の新聞を読む家庭も少なくなるなど情報の格差は広がっているように思います。正確な知識がないことで損をしたり、誤った判断をしてしまったりする可能性もあるのです。生徒たちが将来、何かしらの意思決定に関わる立場になった時に、経済の基礎知識を当たり前のように身に着けているかどうかは、とても重要だと思います」
日経電子版を通じて得た知識は、物事を正しく判断するための確かな材料になる。だからこそ同校では、中学3年生の段階から社会の動きを“自分ごと”として捉える力を育てる教育を重視しているのだ。
今後は他教科への展開も。読み方講座も取り入れたい
今後は探究学習を含めた他教科にも日経電子版の活用を広げていきたいという有阪教諭。「日経電子版 for Education」導入校むけ「日経の読み方・使い方講座」もぜひ実現したいという。「日経電子版をさらに活用できるように、中学生でも無理なくできる読み方や、記事検索・保存など電子版ならではの機能を紹介する機会をつくれたらと思っています」
ニュースや経済の動きが「遠い世界の話」ではなく、自分たちの生活と直結するものとして自然と捉えられるよう、日々、様々な手法で取り組んでいる成城中学校・成城高等学校。日経電子版に日常的に触れることで得た知識は、将来リーダーとして社会に羽ばたく生徒たちにとって、確かな資産となっていくだろう。

成城中学校・成城高等学校
学年:中学3年生
教科:公共
授業者:地歴公民科、グローバル・キャリア教育係 有阪喜一郎教諭








