課題
・人が読む「日経電子版」をそのまま、中学生から体験してほしい
・受け身ではなく、自ら主体的に情報を検索し取得できるようになってほしい
・趣味や熱中していること、あらゆることが学びにつながることを知ってほしい
1947年に設立された私立清泉女学院中学高等学校は、神奈川県鎌倉市の玉縄城跡に建つ。豊かな自然に囲まれた校舎からは、箱根や富士山が一望できる。同校では基礎学力を養いながら、独自の教育プログラムや教科を横断した学びなどを通して、主体的に学ぶ生徒を育成する。「模擬国連大会」や「ビブリオバトル」など様々な課外活動にも取り組んでいる。
社会科では「一人の主権者として、いかに社会と関わり貢献するかを考える」人物の育成を目指し、情報を読み取る力や、多角的な視点による考察や表現力を養っている。中学1年生の社会科を担当する北宮枝里子教諭は、2023年から中学校の社会科の授業に「日経電子版 for Education」を取り入れた。
「中学1年生でも経済紙を読めるのか?」と懸念の中、スタートした
「本校ではこれまでにも社会科に限らず、新聞を活用した授業を行う教員は多かった。しかし紙の新聞はスクラップや保存も大変で、もっと便利なものがあれば…と考えていたところ同僚から『日経電子版 for Education』を教えてもらった」という北宮教諭。もともと個人で購読する日経電子版を授業のヒントにしていたこともあり、「大人が読む日経電子版をそのまま、生徒にも使わせたい」という思いですぐ導入に踏み切った。他教科でも新聞を教材としているため、中学1年生の生徒たちは新聞記事を読むことにさほど抵抗はなかったものの、「経済紙である日経電子版の内容についてこられるのか」という懸念がある中のスタートとなった。

授業のはじめに日経電子版を読む習慣が身に付いた
2023年度、社会科の授業で日経電子版を導入。まずは「紙面ビューアー」で一面から社会面、文化面まで、朝刊の紙面を一通り読ませることからスタートした。「紙の新聞を購読している家庭が少なく、生徒たちは新聞ならではの紙面構成に慣れていない」ことを踏まえ、最初の1時間で紙面ビューアーの読み方、記事の保存、保存記事を読む方法などを徹底して伝えた。そのうえで、自由に記事を読む時間を設けたところ、生徒たちは早速自身の趣味に関連した記事を調べるなど、思い思いに検索を行ったという。
「1学期から社会科授業の冒頭5分は、必ず日経電子版で朝刊を開いて紙面を読むことを続けた。『今日の1時間は新聞で』と、特別に1回だけ新聞の授業をするのではなく、たとえ短い時間でも毎回行うという継続が大事」だと北宮教諭は伝える。結果、今年度の中学1年生は半年後には教員の声がけがなくても、授業の開始とともに自主的に日経電子版を開くようになった。5分間でどのような使い方をしているか調査したところ、「紙面ビューアーで朝刊を読む」「トップページからスクロールして、順に記事を読む」「好きなワードで検索して、記事を探す」が、それぞれ約1/3ずつという興味深い結果だった。

「SNSネーティブの中学生は、自分の興味のある記事ばかり見る傾向がある。それでも日経電子版の場合、多くの記事に何かしら『経済的な学び』があり、様々なトピックと自分の興味・生活との関わりに気付くことができる」と、北宮教諭はその利点を説明した。さらに「記事を読むことで、世の中を客観的に俯瞰する視点を身に付けてほしい」という狙いがあったとも話す。
自ら情報を探すことで学びと理解を深める
日経電子版を導入して2年目の2024年度、北宮教諭は2つの新しい取り組みを始めた。一つめは、授業で学んだ単元に関する最新記事を生徒が電子版で自ら探し、発表を行うというものだ。導入1年目の2023年度は北宮教諭が探した記事を共有し、生徒に読ませるという副教材的な使い方をしていたが、生徒の検索能力が上がってきたことから、この方法を追加した。
「コロナ禍を経験した生徒たちは『提示されたものをやる』習慣が身に付き、能動的に動くことが少ない傾向にある。生徒が自分で情報を探して取ってくるという経験が重要だと考えている」と、北宮教諭は話す。生徒たちは読んだ記事と単元で学んでいることを自然に繋げることができ、より深い理解が得られているという。
二つめが「ヌンティオバトル」だ。聞き慣れない名称だが、これは北宮教諭が独自に命名したもの。同校でも開催されている書評合戦の「ビブリオバトル」にヒントを得た、いわばその「新聞記事バージョン」だ。それぞれが好きな新聞記事を選んで要約とポイントをみんなの前で発表、「もっとも読んでみたい記事」を決めるという試みだ。
「制限時間を設けて記事のポイントを読み取り、情報を補足しつつ160字から200字以内の記事の要約を書く。希望者は3分間でプレゼンテーションする」ものだが、毎回とても盛り上がるという。クラスの進度を合わせる際や余剰の時間があった時に、不定期で開催している。
「要約することを通じて、読解力や文章でまとめる力が付くことも期待している。また記事をまとめていく作業なので、生徒たちにとってゼロから作文するよりも取り組みやすい」と、北宮教諭は話す。

電子版は生徒が予想していない知識や気づきをもたらしてくれる
日経電子版の導入によって、生徒から学びをもらう機会も増えたという。ある生徒は授業冒頭の日経電子版タイムで「動物細胞に葉緑体を移植する技術が開発された」との記事を発見。これが理科で習ったばかりの光合成の、また新たな可能性を示していると興奮、北宮教諭や他の生徒にわざわざ見せに来たという。「私も日経電子版を毎日読み込んでいるが、自分が気付かなかった記事を教えてもらうなど、生徒から学びがあるのは喜びだ。見つけた記事について生徒と会話できることもとても楽しい」と、醍醐味を語った。
生徒にも大きな変化があった。「自分の趣味や、何か熱中できるものを突き詰めていくと勉強に繋がるということに気付いてくれた。『何でも学びの材料になるんだ』という認識が広まったのは嬉しい」と話す。
中学1年生の社会科の授業では3学期に、生徒が任意で選んだ世界遺産をテーマにした探究活動を行う。その際、自分が興味ある題材を電子版を使って調べることからスタートし、世界遺産を選ぶ生徒も多い。例えば自分の好きな漫画から調べ始めたある生徒は、「迫害」や「差別」といったキーワードから、ポーランドの「アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所」にたどり着いた。「新聞記事は生徒が予想していない知識や気づきをもたらしてくれる」と、その効果について語る。
中学生に難しい言葉でも、繰り返し目にすることで生活との繋がりを体感できる

通勤時にスマートフォンで日経電子版を愛読しているという北宮教諭は、「授業準備がしやすいツール」だと話す。「電車で読んだ記事を授業で使いたいと思ったらその場で記事保存し、授業ではリンクを一斉送信するだけでよい。スクラップも印刷の必要もない」と、電子版ならではの簡便さを重宝している。
さらに「経済紙なのでどうしても難しい言葉は出てくるが、言葉の深い意味までは理解できなくとも、繰り返し目にすることに意味はあるし、いかに自分の生活に直結するワードであるかを体感している筈。例えば普段どこかで『円安』の話題が出て、これまでは素通りしていたとしても、今では中学1年生でも円安が自分の生活に何かしらの影響を与えていることを実感している。それは大きな成長であり、そのベースがあるかないかでは、今後の公民分野や他教科での学びが大きく変わってくる」と話す。導入時に感じていた「中学1年生が経済紙を読めるのか」という不安も今は払しょくされた。「予想していたよりも、経済紙をしっかり読みこなしている。興味をもって記事を読んでいる姿が印象に残った」という。
最近生徒たちが楽しんでいるのが電子版の記事翻訳機能だ。生徒が自ら見つけた機能で、「この機能を使って語学の勉強をしたい」と自発的な自学自習に役立てるきっかけにもなった。北宮教諭は「どんな授業ができるかはまだわからないが、ぜひ英語科の教員と翻訳機能などを共有し、英語と社会の教科横断授業にいかしていきたい」と抱負を語った。
清泉女学院中学高等学校
学年:中学1年生
教科:社会
授業者:社会科北宮枝里子教諭








