1日1行の新聞記事選び 1カ月後に達成感

昭和学院秀英中学校・高等学校

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1日1行の新聞記事選び 1カ月後に達成感

課題

・授業で学ぶ内容が社会とつながっていることを感じてほしい
・正しい情報を見極める力を養ってほしい

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 アウトレットモールや数多くのオフィスビルが立ち並ぶ千葉・幕張新都心。千葉県有数の文教地区でもある同エリアに、千葉県有数の進学校、昭和学院秀英中学校・高等学校がある。探究学習にも力を入れる同校は、2025年度から「日経電子版 for Education」を導入。今回は、中学3年生の公民や総合的な学習の時間を担当する秋葉亜紀教諭に、導入の背景や狙い、具体的な活用方法などについて話を聞いた。

多少背伸びをしても、より幅広い情報に触れる習慣を

 「以前から生徒たちには新聞を通じて学びを深めてほしいと考えていました」と語る秋葉教諭。同校は2024年度に、学生向けの新聞の活用を開始。2025年度からは「生徒には少し背伸びをしてでも大人向けの情報に触れてほしい」との思いから、2025年度より日経電子版を導入した。

 「学生向けの新聞は活字に慣れていない生徒でも読みやすい半面、当然ながら内容は学生向けに編集されており、物足りなさも感じていました。『学生はこれを読むべきだ』と限定するのではなく、難しいと感じる記事も含め、幅広い情報に触れてほしいと思いました。そこから学びを深めるきっかけや、将来の進路につながる情報を見つけてくれたら」と、秋葉教諭は話す。

 それでも新聞を読むことに慣れている生徒は決して多くはない。

 「まず初めに『すべての記事を読む必要はないよ』と声をかけています。電子版の画面をざっと眺め、気になった記事だけ読んでみるのもよいし、気になる言葉で検索をかけ、一番上に表示された記事を読むだけでも構わない、と。そんな声がけを繰り返し、とにかく心のハードルを下げる働きかけを続けたところ、生徒たちも徐々に新聞に親しんでくれるようになったと感じています」

「デイリーホームワーク」で日経電子版を習慣化。短時間で要点をつかむ力を養う

 中学3年生の公民の授業では、秋葉教諭オリジナルの宿題「デイリーホームワーク」が文字通り毎日、生徒に課されている。日経電子版から興味ある記事を1本選び、見出しと自分の考えを1文だけ書くというものだ。

 「公民では毎日の宿題を出していませんでした。数学や英語のように予習・復習が必須の教科とは性質が異なるため、まずは授業中に理解できればよいと伝えていたのです。だからこそ、デイリーホームワークが始まったときには生徒たちも驚いていましたね」

 選ぶ記事のジャンルは自由。同じ分野の記事をピックアップし続ける生徒もいれば、日替わりで多様な記事を提出する生徒もいるという。

 「1学期を通して取り組んでみて、最初のうちは記事選びに時間がかかり締め切りに遅れる生徒もいましたが、次第に期日通りに提出できるようになってきました。提出物をあらためて振り返ると、生徒は当初想像していた以上に成長した、という実感です。新聞記事を毎日読み続けることで短時間で要点をつかむ力が養われたのだと思います」と秋葉教諭は振り返る。

 提出方法を「紙」にしたのも工夫の一つだ。タブレットで新聞記事を読みつつ、同じ端末で入力するよりも、手元で紙に書いた方がスムーズだからだ。

 「プリントに1日1行書くだけですので日々の負担はそれほどではありません。しかし、1か月も続けると蓄積が一目でわかり、大きな達成感が得られるのです」

 保護者からも思わぬ反響があった。保護者面談で、「子どもが家でニュースの話をするようになって驚いている」という声があったのだ。「紙だと家庭でも共有しやすいのでしょう。予想外でした」と秋葉教諭は喜ぶ。

興味ある記事を毎日1本選び、見出しと自分の考えを1文だけ書き出す。蓄積が一目でわかり、大きな達成感に繋がっている

教科書の内容と社会で起きていることを、新聞でつなげる

 秋葉教諭の授業では、生徒が公民で扱われるテーマで関連する記事を探し、見つけた記事をPDFで保存して、気になる文に線を引いて感想を書く、という課題も行っている。

 手書きの「デイリーホームワーク」とは異なり、課題の提出はPDFだ。生徒だけでなく、教員の負担も減らすためだ。

 「生徒は1人1台タブレットを持ち、日常的にPDFに直接書き込んでいます。記事をプリントアウトして提出するのは心理的にも負担が大きいですが、PDFに書き込むだけなら隙間時間で取り組めます。教員側もGoogleクラスルームからすぐに記事PDFを開けるので採点もスムーズです。2学期以降も続けたい取り組みですね」

 「消費者問題」をテーマにした授業で面白いことが起きた。多くの生徒が「届かぬ『クラスTシャツ』、体育祭前に悲鳴 ロゴマークで税関没収も」(2025年6月15日)にたどり着いたのだ。

 「学生である自身にとって身近なトピックが記事になっていることに面白さを感じる生徒がたくさんいました。また地域の出来事など、身近なトピックのニュースに触れることで“新聞=大人向けのもの”というイメージが、少しずつ親しみを持てるものに変わっていったようです」と生徒の変化を語る。

PDFで保存した記事に直接アンダーラインや感想を書き込み、Googleクラスルームで提出。教員もスムーズに採点できる

新機能「Ask! NIKKEI」で探究テーマを検証、組み立てていく

 中学3年生では、公民だけでなく「総合的な学習の時間」でも日経電子版を活用している。1学期の後半からは、生成AIを活用した新機能「Ask! NIKKEI」も取り入れているという。

 「総合的な学習の時間」では、自分の興味のあるテーマを深く調べ、論文にまとめる。この際にカギとなるのが、テーマ・仮説の設定だ。生徒たちは「デイリーホームワーク」での取り組みや生活で気づいたことをヒントにリサーチクエスチョンを考え、「Ask! NIKKEI」に問いかけてみる。

 「『睡眠と心の関係』や『バスケットボールがうまくなるには』など、生徒はそれぞれ自ら考えた問いを投げかけました。回答がうまく生成されない問いは探究の難易度が高すぎる、逆に答えがあっさり出てしまう問いは良い探究につながりにくい、と判断できます。「Ask! NIKKEI」とのやり取りを繰り返すことで、適切なテーマを少しずつ組み立てていきました」

 秋葉教諭は「Ask! NIKKEI」を高く評価する。なぜだろうか。

 「一般的な生成AIは正解を持たない場合でも、あたかも正しいかのように答えを提示することがあります。『Ask! NIKKEI』は日経電子版の記事をソースに回答するため、答えにつながる記事がないときは『該当する記事はありません』と表示されます。これは大きな安心材料です。ソースの記事をリンクで示してくれるので、そのまま参考文献として使えるのもメリットですね」

 「Ask! NIKKEI」を活用する取り組みは、AIに慣れ親しんでいる生徒にとって、“情報の真偽を見極める力”を養うきっかけにもなっているのだ。

生徒たちは授業や生活で気づいたことをヒントに考えたリサーチクエスチョンを「Ask! NIKKEI」に問いかける

様々な場面で感じる、生徒たちのリアルな変化

 「最近驚いたのは、休み時間に生徒たちがニュースを話題にしていたことです」と、笑顔を見せる秋葉教諭。「デイリーホームワーク」で読んだ新聞記事について、クラスメート同士で話し合う姿は新鮮な喜びであったとのこと。

 生徒の変化は歴史への関心にも表れているという。「社会で今起きていることと歴史のつながりに関心を持たせるため、話題のニュースについて話すことがあります。以前はクラスで1~2人しか反応してくれませんでしたが、最近はそれが関税や外交問題などの難しいテーマであっても何かしらの反応が返ってくるようになりました。日経電子版に日常的に接している中学3年生が、来年高校で現代史を学ぶ際に、日々のニュースと歴史を結びつけ、より興味を持って取り組んでくれるのではと期待しています」

 高校3年生も日経電子版を大学受験対策に活用しているという。「政治経済の授業を選択している生徒には電子版を自由に使わせていますが、アンケートでは『通学中などに新聞記事を読む習慣がつき、社会の授業も分かりやすくなった』との記述がありました。時事の知識は小論文試験や面接でも必須なので、さらに声がけをしていきたいです」

秋葉教諭は「授業で関税や外交問題などの難しいテーマのニュースについて話しても、何かしらの反応が返ってくるようになった」と語る

今後は新聞記事をテーマにディスカッションを

 今後は「1つの記事を題材に、クラスでディスカッションする機会を設けたい」と秋葉教諭。「電子版は生徒全員が同じ記事を簡単に共有できます。生徒は既に新聞を読むことに慣れており、読むスキルがさらに上がれば、記事を題材にした議論はより活発になるはず。ぜひ取り組んでみたい」と意欲を示す。

 校内では、既に英語・数学・国語・美術など幅広い教科の教員が、日経電子版の活用を検討しているという。また今年度新たに設立した「模擬国連部」でも活用を予定しており、授業の枠を超えた活動にも日経電子版の利用が広がりつつある。

 今を深く知ることは過去を理解し、未来を描くことにもつながる。生徒たちが日経電子版を通じて得た学びは、将来の自己実現のために大きな原動力となることだろう。

中学3年生の公民や総合的な学習の時間を担当する秋葉亜紀教諭

昭和学院秀英中学校・高等学校

学年:中学3年生
教科:公民 総合的な学習の時間
授業者:秋葉亜紀教諭

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