「感想」じゃない「考え」を書こう まずは朝夕刊

帝塚山中学校・高等学校

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「感想」じゃない「考え」を書こう まずは朝夕刊

課題

・主体的に長文の文章を読む力と、理解する力を身につけてほしい
・興味・関心のある分野だけでなく、幅広い情報に触れて、自分の考えをもってほしい
・1人1台の端末で正確な情報を得る体験を経て、情報収集と活用に生かしてほしい

 奈良県奈良市にある帝塚山中学校は、併設の高等学校に続く、私立の中高一貫校だ。授業は男女別、課外活動等は合同で行う「男女併学」制度を取り入れており、中学では「英数」や「特進」など3つのコースが用意されている。

 2024年度の4月から、中学校と高校で日経電子版を導入。現在、中学の国語と社会、高校の公民などでの活用が始まっている。同校でICT活用の担当を務める八尋博士教諭は、「近年、『問題文を読んでも状況を把握できない』『解説の内容を理解できていない』といった、生徒の読解力に課題を感じていた。スマートフォンの登場によって、SNSなどの短文文化に慣れてしまい、長文のような時間のかかる読解が非常に苦手になっている」と、導入に至った課題を話す。

朝刊と夕刊から記事を見つけて、感想ではない「自分の考え」を書く

 帝塚山中学校で、日経電子版を活用した授業のひとつが、「女子英数コース スーパー選抜クラス」1年生の「国語」の授業だ。単元「国語の表現」の一環として、特別時程45分授業の2時間連続授業で行われた。視聴覚室を使って、2クラス合同の計70人での授業となった。

 最初の1時間では、電子版のログインからスタートし、生徒は、朝刊と夕刊の中から好きな記事を選んで自由に読んでいく。

1人1台で記事を読み、質問しながら国内外の記事に触れた

1.席の移動を自由にし、生徒の教え合いを促進

 2時間目では、最初に毎年3学期に行う校内行事「弁論大会」の動画を全員で視聴した後、Google Classroomで配信した「コメントシート」に、選んだ記事について自分で調べたことや考えたことをコメントして記入し、提出を行った。さらに、授業を行った国語科の小野有子教諭は、生徒の理解力や進捗などの様子を見ながら、以下のような工夫をした。

 生徒の進捗には個人差があり、タブレットの操作がうまくいかない生徒もいる。そうした場合、親しい友人や進んでいるクラスメイトの席に行き教えてもらうといった「教え合い」が自然にできていったという。

2.扱う記事を朝刊と夕刊のみに限定

 「幅広い分野の記事に触れてほしいが、中学1年生では範囲が広すぎると混乱してしまう。そのため、あえて区切られている中でも、様々な分野が掲載されている朝刊・夕刊から始めてみた」と、小野教諭は話す。

3.生徒の様子を見て、コメントシートの見本を作成

 当初予定していなかったコメントシートの見本を、授業内に即興でつくり、Google Classroomで共有をした。「生徒には、最初に『一般的な感想は書かない。面白いと思ったのならその根拠を、問題だと思ったのなら、その問題をどう解決すべきかを書きなさい』と伝えたが、とまどいが見られたため、見本を用意した」という。

コメントシートの見本を作成し、即、生徒に共有した

4.授業の合間に、弁論大会の動画を視聴する

 中学1年生から高校2年生まで毎年開催している「弁論大会」では、学年全員が個人で興味のあるテーマを自分で見つけ、作文を書く。「動画を見せたのは、2時間連続授業でのメリハリをつける意味と、大会でも新聞記事を参考にすればテーマを決めやすくなるため、そのきっかけにしたかった」と、小野教諭は話す。

5.授業内にコメントシートが終わらない生徒は課題として後日提出

 生徒の進捗には差があるため、授業内に提出できない生徒は、課題として3日以内に提出することとした。これにより、提出漏れを防ぎ、自分のペースで考えて書くことができる。

電子版の操作を教え合い、記事について話し合う姿が教室で見られた

「自分の端末が新聞になり、いつでも情報を得られる」という経験が重要

 生徒の多くは、日常的に新聞を読むという習慣がないが、デジタル世代ということもあり、すぐに自分の好きな記事を見つけていったという。深刻な社会問題を取り上げる生徒がいる一方、「アイスクリームの値下げ」や、「海外でのアニメ人気」など、自分の興味関心のある話題やユニークな記事を発見する生徒もいるなど、多様な視点があったことも発見だったという。

ある生徒は人口推移の記事に着目し、海外の少子化対策も踏まえて問題点を考察

 今回の授業を行った手ごたえのひとつとして、小野教諭は、「生徒が、『自分たちも、新聞を読める』ということを理解できた」ことをあげている。「コロナ禍からタブレットを活用している生徒にとっては、身近な道具であるタブレットで、いつでも新聞を読むことができる。今後、発表や調べものをする際にも使えることが分かったことは、非常に良かった」と話した。

 また、ひとつの記事を取り上げた際、あわせて掲載されている資料を読んで、コメントシートに反映させている生徒もいたという。「まだ一部の生徒のみで、深く読み込むという段階まではいかないものの、資料を読むことに抵抗がなくなったり、判断のひとつとして関心をもったりしたことは大きな成長だった」と、その成果を伝えた。

カラーやビジュアルデータなど電子版ならではのメリットは大きい

 これまでも紙の新聞を使って授業を行ってきた小野教諭は、その目的を「自分の好き嫌い関係なく、様々な情報を入手できること」と話す。「生徒には、『新聞は最初から最後まで読みなさい』と伝えている。多様な情報を手に入れて、それに対する自分の考えを持ってほしい」と期待を語った。

 そして、今回の授業で電子版を使ってみて、その利点に気付いたという。「45分の2時間連続での授業は、中学1年生の生徒にとっては大変なものだ。けれど、生徒たちは飽きることなく、興味を持って電子版の記事を読んだり書いたりすることに取り組んでいた。電子版ならではのカラーのわかりやすさ、資料の見やすさといったメリットを、生徒たちも感じていた」と、その効果を語った。

 今後の活用として小野教諭が着目しているのが「ビジュアルデータ」だ。「将来的には大学入試共通テストでもデータを読み解くといった形式が入っていくと言われている。まだ具体化していないが、国語の授業でもデータを取り入れたものを行っていきたい」という。

図表や写真で旬を解説する「ビジュアルデータ」は、読み解きに最適な教材

 電子版導入を担当した八尋教諭は、同校の他教科での展開として「中学の社会と高校の公民、高校3年生の大学入試における推薦文」などでの活用をあげている。 「電子版を使う価値は間違いなくあるので、校内でも研修を行っていきたい。やはり実際に使ってみないと身に付かないので、まずは試しにやってみることが大事」と、取り組んでみることの大切さを伝えた。

帝塚山中学校

学年:1年生
教科:国語
授業者:帝塚山中学校・高等学校 国語科 小野有子教諭

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