日本の中等教育の研究校として、先進的な教育実践をしてきた 筑波大学附属中学校では、「日経電子版for Education」を全学年で授業に活用している。関谷文宏教諭が担当する社会科では、太平洋戦争について扱う授業で、日経電子版の記事や評論を引用しながら生徒同士で活発に議論を深める様子が見られた。
「調べて考える」のスキルを磨く、生徒主体の授業を実践

2024年4月に行われた中学3年生の授業では、「週末になにか日経電子版で検索した人いますか?」との関谷教諭からの呼びかけから始まる。生徒からは「技術の授業への準備で」「GAFAについて調べました」との声があがり、生徒との自然なコミュニケーションが生まれていく。
授業では、日本史としての日米開戦について、「なぜ太平洋戦争を防ぐことができなかったのか」という問いを、生徒一人一人が考える機会を設けた。生徒は、それぞれに付与された日経電子版のアカウントを利用し、記事を検索・参照した上で、自身で調べて整理した内容を一枚のスライドにまとめる
「日米開戦の原因は雰囲気にある」ーー。
大きく見出しの取られた生徒のスライドが一例として紹介された。

スライドは、見出しの他に、小見出し、前文、まとめなどの要素で構成されており、重要な部分は太字で強調するなど、整然とまとめられている。生徒からは「なんでこんなに綺麗にまとめられるんだろう」との声も漏れていた。
新聞記事で典型的な文章の組み立て方である「逆三角形型」で作られた発表資料は、多くの生徒を預かる先生にとっても要点が掴みやすいメリットがある。

教科書に載っていない最新情報が生徒の学習をより深く
生徒とのやり取りでは、必ず「どんなワードを電子版の検索欄で調べたか?」から問いかける。関谷教諭はその意図について、「直接的に答えを示してくれる記事は少ない。生徒自身が何をポイントとして捉えて調べているかが大事だ」と話す。生徒の様子を見ると、検索した記事内で新たに見つけたキーワードをさらにサイト内で検索して深掘りする姿が見て取れた。
同じテーマで検索しても、見つけ出してくる記事は人それぞれだ。政治・外交から社会、文化面の記事、社説や書評に至るまで、引用元は幅広い。いかに要素の詰まったオリジナリティーのある発表資料をつくれるかというところを、授業では重視する。
関谷教諭は「歴史の授業で事柄を暗記するだけでは、多様化する入試も乗り切るのが難しくなってきている。社会課題の解決策を歴史から見出すという思考訓練を、現代社会に必要な情報の処理・編集能力を実践しながら鍛えていく」と、授業の狙いを説明した。
過去の授業では、多様な観点から物事を見つめる視座を養うために、日経電子版を使いながら「あえてフェイクニュースを作る」という授業にも挑戦したことがあるという。

新聞記事を歴史の授業に用いることで、過去の事実や歴史的な経緯が現代の出来事にどのように関連しているかを理解することができる。生徒とのやり取りでは、「決裂を防ぐためには、直接対話が大切になる」と、現在の米中対立にも絡めて指摘する声もあった。「太平洋戦争後の政治の混乱を知ることで、現代で行われる戦争や紛争の戦後統治の難しさを理解することもできる」(関谷教諭)。
太平洋戦争の開戦前後、市井の人々の心理状態についても言及があった。「正常性バイアス」「サンクコスト効果」「確実性効果」など、大学の社会心理学の授業で習うようなワードについて、日経電子版で生徒に調べてもらいながら解説。具体例を挙げながら、生徒の関心を引き付けていた。
授業中には、先生が発言した言葉を即座に日経電子版で調べて学習する生徒の姿も多く見られた。調べ学習の発展形として、生徒の知的好奇心をはぐくむ主体的な学びに日経電子版が活用されている。

関谷先生へのインタビュー
長い間、新聞記事の切り抜きなどを授業で活用してきた関谷先生は、社会科の授業の最終目標として「生徒に将来ノーベル平和賞を獲ってほしい」と話す。自分を知ることが社会課題の解決に繋がるという考えのもと、日経電子版を活用した授業を展開している。日経電子版を活用した授業運営のやり方を聞いた。
■新聞を授業に活用することは、生徒にとってどんなメリットがあるのでしょうか
第2の資料集として、活きた情報を授業に
新聞記事には教科書や資料集には載っていない最新の情報が積み上げられているという強みがあります。教科によって使い方は異なりますが、社会科では歴史の新説や新たな発見、現代社会の問題に沿った歴史の解説などのコンテンツが活用できます。歴史の用語で検索をしてみると、教員でも知らない話題や情報が載っていることもあるので、それらを授業にすぐ落とし込めるというのは大きな強みです。
我々が生きる現代につながる活きた情報を授業に取り入れられることは、非常に有意義なことだと感じています。

■中学歴史の授業でニュース記事を活用するというのは意外性がありました
歴史と現在を比較するためにニュースを読みこむ
中世や近代など各時代の社会課題の根底にある問題を理解すれば、今に繋がるという想いを持っています。例えば、古代には疫病の流行に大仏を建立しましたが、その行動の背景には何があったのかを深堀りすれば、現代のパンデミックに対する対応の仕方にも通じるところがあるかもしれない。
歴史の授業をやる際には、個別の事象を暗記してもらうだけでは意味がなく、過去の出来事に「興味」をもってもらって社会課題の「解決」に目を向けるような展開が必要だと考えます。
■日経電子版の利用は生徒にどんな影響を与えられると思いますか
社会に出ても使える高いスキルを養える
普段接している生徒たちは、いずれ社会に出て日経新聞を習慣的に読むことになる。今回の授業のように問題解決を探る作業は、将来のあらゆる仕事に直結するし、そのツールとして日経電子版を活用して、情報をブラッシュアップすることに慣れてくれれば、社会に出ても使えるスキルになります。生徒には、授業の中だけでなく普段から、質の高い情報や文章に触れて自分を磨いてほしいなと思います。
東京都 筑波大学附属中学校
学年:3年生
教科:社会科
授業者:関谷文宏








