課題
・教科書にない最新の情報に目を向け、知識としてほしい
・考察・分析のためのデータベースとして使ってほしい
・卒業後の就職に備えて、新聞で情報収集する習慣を身に着けてほしい
全国に国公私立ふくめ58ある高等専門学校は、優れた専門技術者を育成する5年制の高等教育機関として、近年注目を集めている。そのひとつである山口県の国立宇部工業高等専門学校は、機械工学科、電気工学科、制御情報工学科、物質工学科、経営情報学科の5つの専門学科にくわえ、2年制の3つの専攻科が設置されている。
経営情報学科の中村英人准教授の研究室では、ゼミの活動で、さまざまなデータをどのように活用し、分析や課題解決に役立てていくかの実践を重ねている。
今期は専攻科1年、本科5年及び4年の学生13人がゼミに所属し、地域の課題などをテーマに、オープンデータを活用した分析に取り組んでいる。
2023年度は、ゼミでの分析や研究、日常的な学びに活用できるよう、日経電子版アカウントをゼミ生全員に配布した。
データ分析の取り組みで、日経電子版を活用
2023年7月、4年生の中村ゼミでは、「山口県の人口減少」などをテーマに学生の発表が行われた。「このゼミでは、山口県の統計資料の中から、自分が着目した部分をピックアップし、さらに掘り下げて発表を行っています。スポーツでいうところの走り込みのように、データを読み、自分なりに解釈をする経験を重ねているところです」と、中村准教授はゼミのねらいを話す。
今回発表したのは、2名の学生。1人目の竹原さんは、「総人口の長期的な推移」「人口ピラミッド(人口構成)の推移」に着目したという。国勢調査等のデータをもとに人口の推移を分析し、その要因として、戦争の終結やベビーブーム、国の政策などを挙げた。後半では、日経電子版の中から気になった記事をピックアップし、日本の少子高齢化と外国人労働者について触れた。
続いて、二人目の中島さんは、「山口県の商業事業者数の推移」をテーマに発表を行った。経済産業省の商業統計調査をもとに、県内の卸売業と小売業の占める割合を全国の平均と比較したところ、山口県は卸売業が少ない傾向にあることが明らかになったという。さらに、関連情報を日経電子版の記事から引用し、後継者不在率が全国最少である三重県を例に挙げ、「地元金融機関の強力なバックアップが背景にあった」ことを紹介した。
発表が終わると、中村准教授が講評と解説を行った。さらに、「昭和45年から50年の間のデータを見ると、この5年の間に何か重大な出来事があったと推察できる。それは何だろう?」と問いかけ、学生と対話を重ねながら、データの読み取り方を指南していった。

日経電子版はプル型で整理された情報を入手できる
ゼミを主宰する中村准教授は、これまで自動車メーカーの情報システム部門や、山口県庁の統計分析部門で地域経済や人口減少分析などに携わってきたという異色の経歴を持つ。
「企業や県庁時代から、日本経済新聞をはじめとした主な新聞はすべてチェックしており、部署の関連する情報をスクラップして収集していた」という。教員となった現在は紙とデジタルを使い分け、講義で役立つ記事や、学生に伝えたい記事などをピックアップしている。
「私自身が、日本経済新聞のヘビーユーザーであったこともあり、今回試験的に導入できる機会があり、ぜひ学生に使わせたいと思いました」(中村准教授)
中村准教授が、研究室のゼミ生に期待するところは、新聞を情報のデータベースとして活用するという使い方だ。「新聞は、インターネット上の雑多な情報と異なり、きちんと整理された情報がストックされているデータベースであり、電子版であれば、簡単に検索して利用することができます」と話す。
また、新聞は常に最新の情報が掲載されている点も大きなメリットだ。「教科書はいわば公式の情報で、間違いのないものではありますが、変化の激しい現代においては、どんどん情報は古くなっていきます。それを補完するという意味でも、最新の情報を新聞で検索し、自分が調べてきた論点と結びつけるというのも、一つの考察になると考えています」(中村准教授)
長年、個人的にも新聞から情報収集を行ってきた中村准教授は、電子版の利点は「プル型」であることを挙げた。「これまでは、紙面に与えられた内容から自分の必要な情報を探す『プッシュ型』でしたが、電子版であれば、過去の記事も含めていつでも自由に検索できるだけでなく、自分の知りたいキーワードを設定しておくだけで、毎日情報が届きます。学生にも、こうした便利な使い方があることは伝えています」(中村准教授)

新聞はデータサイエンスの教材にも成り得る
中村研究室での今後の課題は、日経電子版をもっと学生が使っていくことだ。
「まだ使い始めたばかりということもあり、現時点ではプル型の恩恵も受けておらず、発表の折に検索して関連記事を見つけているぐらいの使い方だと思います。便利なものなので、就職先企業での活用も見据えて、もっと使い方を広げていってほしいと思います」と、中村准教授は話す。
そのひとつが、新聞に掲載されているグラフの活用だ。
昨年度は、山口県庁が公開しているグラフをお題に、「そのグラフは、どんなデータをもとにつくられたかを自分たちで類推し、再現する」という演習をゼミで行った。力はついたものの、学生にはかなりハードルが高いことがわかったため、今年度は新聞に掲載されているグラフを参考に取り組む方法を検討しているという。
「新聞に掲載されているグラフは、わかりやすく見せるために考え抜かれたもので、たくさんのヒントがあり、とても勉強になります。そのまま真似するのではなく、そのノウハウを学び、自分たちで吸収していくような使い方をしていければと考えています。『自分たちだったら、どんなグラフをつくるか。折れ線でなく散布図を使ってみる』といったことにより、また違う分析につながっていくかもしれません」(中村准教授)
さらに、「電子版であれば、ただ読むだけでなく、これからはデータサイエンス的な教材として使えるかもしれない」と、中村准教授は今後の展望を語った。
産官学の知見を持ち、長年、新聞を活用してきた中村准教授だからこそ、新聞という最新の情報をもつデータベースから、学生の学びに生かす方法を生み出してくれることに期待したい。そこに、新たな新聞の教材としての可能性が生まれそうだ。
宇部工業高等専門学校(山口県)
学年:4年生
教科:経営情報学科 卒業研究 (中村研究室)
授業者:宇部工業高等専門学校 経営情報学科 准教授 中村英人








