豊富な図解と記事で表現力育てる 地理の探究から

早稲田大学系属早稲田実業学校中等部・高等部

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豊富な図解と記事で表現力育てる 地理の探究から

課題

・教科書では得られないリアルな情報に触れ、物事の本質を捉えてほしい
・他者の意見を取り入れ、新たな価値観を吸収してほしい
・経済って面白い!と感じるきっかけになってほしい

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 早稲田実業学校は、東京都国分寺市の広大な敷地に初等部・中等部・高等部を構える学校だ。早稲田大学の系属校として「豊かな学識と表現力」「次世代のタフなリーダー」「伝統の継承」を兼ね備えた人材の育成を目指している。

 社会科を担当する竹林和彦教諭は、「現代を生きる子どもたちは、正解があるものや最短距離で答えに辿り着けるものに頼りがちです。だからこそ、試行錯誤して情報を集めたり、そのプロセスのなかで新たな意見や価値観に触れたりできる日経電子版を使っています」と導入のきっかけについて語る。

 日経電子版を最初に導入した授業は高等部の地理探究。後に高等部・中等部の地理にも展開された。今回は高校3年生の地理探究の授業を見学した。授業を通し、日経電子版導入の狙いや活用方法、実感している効果などを紐解いていく。

日経電子版でリアルな情報を集め、説得できるアウトプットにつなげる授業

高校3年生の地理探究の授業。少人数制のクラスではグループワークを中心に行われている

 今回の地理探究の授業のテーマは、「2025年世界食糧デーに合わせて開催される『ユース会議』に提供するランチメニューをクラスで決定すること」だ。参加国29か国のうち、生徒それぞれが担当する国はくじ引きで決める。生徒によっては馴染みのない国を担当しつつ、国の代表として該当国の課題や特色を捉え、メニューに反映させるというプロセスだ。

 各国のランチメニューの提案書は、A4プリント1枚と決められている。つまり、課題と提案するメニューがつながるよう、ロジカルに端的にまとめ上げる必要がある。

生徒たちはCanvaやAdobe Expressなどのソフトを使って視覚的に訴える資料を作成する

 ドイツを担当した生徒が提案したのは人工培養肉だった。世界人口が増え続けて食糧危機に陥る可能性があるという世界的な課題を捉え、ドイツで研究が盛んな培養肉に注目したのだ。

 またトンガ王国を担当した生徒は、自然災害のリスクが高く農業生産が困難で、輸入に依存しているという国内の課題を捉え、自国で採れるタロイモの葉を使った蒸し料理「ルー」を提案した。

日経電子版で担当の国について調べる生徒。調べ方や表現方法は生徒たちに任せ、自主性を大切にする

 竹林教諭は授業の狙いについて、「地理の授業を生きたものにするためには、教科書に載っていないようなリアルな情報も不可欠。教科書や資料集から情報を集めていたら、例えばドイツならソーセージ、ビールといった定番のメニューが提案されたことでしょう。日経電子版などの『リアルな今』を伝えるツールを通して、教科書に載っていない『ドイツの最先端技術』という生きた情報を得ることができる。これが大きな学びだと思うのです」と語る。

 一方で、マダガスカルを担当した生徒からは「日経電子版にはマダガスカルの情報があまり載っていなかった」という声もあった。国の経済規模によって記事量には多少の偏りが出てしまう。それに対して竹林教諭は「検索ワードを変えたり、地域名で検索してみたり、トライ&エラーを繰り返しながら検索力を上げることが大切」と話す。実際、生徒の中には、インターネットで大まかに調べてピックアップしたキーワードを日経電子版で検索することで、新たな発見のある記事に出会えたという声もあった。デジタルネーティブ世代の生徒はこうした工夫も自然に出来ており、日経電子版のより有効な活用に繋がっている。

 「新聞というのは取材や調査を通じてわかった事実のほか、記者の意見・見解も掲載されています。高校生たちが持っていないようなものの見方や価値観、特に経済的な側面を与えてくれる記事に出会えるのは、日経電子版ならではだと思います」と、竹林教諭。今回の授業でも、あえて自分に親しみのない国を担当すること、他国の意見を吸収し議論することなど、新たな価値観に触れる工夫が随所にされていた。

高校生の今だからこそ、多様な価値観に触れほしい

 「早稲田実業では初等部から高等部まで日経電子版を導入していますが、一番使うべきだと思うのは、高等部です」と語る竹林教諭。大学進学を目前に控えた高校生だからこそ、その意義を感じているという。

 「これから大学生になるにあたり、他人の意見に対し一度『そうか』と飲み込み、自分の意見を作っていけるかどうかが大切です。日経電子版で記者の意見を読み、凝り固まった自分のものの見方を見直すきっかけになったらいいなと思っています」

社会問題の切り口ごとに分かれ、生徒たちが自主的に話し合いをしている様子

 早稲田実業学校では、少人数制のグループワークの授業を積極的に行っている。探究活動、協同学習、体験学習に主体的に取り組むことで物事の本質を鋭く捉える力をつけてほしいという学校の方針にも、日経電子版は一役買っているようだ。

視覚優位性が高い世代をしっかりとらえる「練られた図解」

 同校では2022年度から一人1台 Surface Go3を配布し、ICT教育の充実を図っている。デジタルネーティブ世代である今の生徒たちには、数十秒の動画や数枚の写真・イラストで「パッと見て理解できること」がとても重要だ。このような視覚優位性が高い子どもたちに日経電子版が合っていると感じたのは「練られた図解が充実している点」だと竹林教諭は語る。

 「日経電子版の特徴は、経済的な側面から練られたオリジナルの図解が多いこと。例えば、以前初等部で『日本の漁獲量』について学習をしたとき、日経電子版の図解を教材として使用しました。教科書や資料集なら漁獲量の推移や、外国船の数の推移のグラフが掲載されると思いますが、日経電子版の記事の図解は、中国から押し寄せる中国漁船のルートを地図にプロットしたものでした。子どもたちはそうしたビジュアルを見た途端『どうして排他的経済水域に入ってくるの?』『どうしてこのルートに集中しているの?』と、一斉に興味を持ちはじめました」

 このように、竹林教諭をはじめとする早稲田実業学校の社会科の教諭は、授業の教材を作るときにも日経電子版を活用しているという。

 「気になる記事を『Myニュース』にストックしておけるのがいいですね。これなら生徒たちの興味が湧くだろう、ビックリするだろうという記事や図解をストックしています。ストックした図表から記事本文に飛べるのも便利ですね」

生徒たちの表現力が向上した

工夫が凝らされた生徒たちの提案書。表現方法は生徒がそれぞれ自由に判断している

 早稲田実業学校が日経電子版を社会科で導入し始めて、約2ヶ月。探究活動や協同学習を通し、「調べて他人の意見を吸収する力」だけでなく、生徒たちの「表現力」も身についてきたと感じているという。

 「日経電子版を使い始めて、生徒たちのまとめ方がうまくなりました。新聞というのは限られた紙面や文字数で伝えることに特化しているからこそ、伝えたいことを端的に表現する力が自然に身に付いてきたと感じています」と竹林教諭。

 実際、今回見学した授業で生徒たちが提出した「ランチメニューの提案書」は目を見張るものがあった。多くは語らずイラストとキャッチコピーで訴える生徒、図表を使って論理立てて伝える生徒、読み応えのある文章で説得する生徒など、方法は様々だ。多くはCanvaやAdobe Expressなどのソフトを活用して作成されており、いずれもプリント1枚という限られたスペースで相手に訴えるための工夫が散りばめられている。

 「表現の方法にルールは設けていませんが、必ずエビデンスを入れるようにと伝えています。そうすることで説得力が生まれるからです。まだ試行錯誤の段階ではありますが、日経電子版のデータや図解を活用してくれている生徒もいます」

日経電子版は気付きの宝庫。経済は面白いと気付かせてくれる

社会科を担当する竹林和彦教諭

 日経電子版を地理科で導入している背景について、「試験のための詰め込み型学習ではなく『今起きていることはどんなことなのか』と、現実社会、ひいては経済について考えるのが地理の本質です。リアルな情報や多様な意見に触れることで、改めて本質を見なければいけないと気付くこともあるでしょう。このような気付きを与えてくれる宝庫が、日経電子版だと感じています」と語る。

 さらに今後の授業の展開については、「長期的に一つのニュースのテーマを追っていくという授業も面白そうですね。学年の始まりにキーワードを自分で決めてフォローして、学年末にどのように変化していったのかまとめてみる。最初と最後で自分の意見が変わっていることに気付くかもしれません」と、新たな展望を話してくれた。

 スポンジのように吸収できる高校生だからこそ、新しい意見や価値観に触れる機会を増やし、本質を見抜く力を育てたい。そして吸収した意見をもとに自分の意見を述べ、表現する力を身に付けてほしい。このような早稲田実業学校の思いは、活気あふれる新たなスタイルの授業へとつながっている。

早稲田大学系属早稲田実業学校中等部・高等部

学年:高等部3年生
教科:地理探究
授業者:社会科竹林和彦教諭

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