『数学』が株式の調整弁に 超難関ならではの学び
大和証券グループと日本経済新聞社は2025年1月、「日経電子版 for Education」の取り組みの一環で、奈良市の私立東大寺学園中・高等学校にて出張授業を行いました。
東大寺学園は国内でも有数の超難関校で、毎年多くの生徒が東京大学や京都大学といった難関大学に進学します。今回は中学3年生を対象に「Math in Investing~投資と数学のフシギな関係~」と題して”投資と数学”をテーマに授業を行いました。
実は関係が深い「投資」と「数学」
「名門の東大寺学園で講師を務められることをとてもうれしく思います」ーー。今回講師を務めた大和証券エクイティ営業部の森本裕貴氏は授業冒頭、こう生徒に伝えました。森本氏は関西出身です。進学実績はもちろん、自由な校風で知られる東大寺学園は少年時代からの憧れの的で、その生徒たちとの交流をとても楽しみにしていたようです。
日本や米国・ニューヨークでの勤務を経て、米国を中心とした世界の金融・経済の情報を収集し分析を行っている森本氏。日本全国で「金融・経済」に関する講演を行うことも多く、「日経電子版 for Education」の出張授業ではこれまで何度も講師を務めています。
授業は「投資と数学が遠い距離にあるように見えて、実は関係が深いということを伝えたい」という言葉から始まりました。東大寺学園では理系を選ぶ生徒が学年の約8割に及ぶといい、多くの生徒にとって数学は「身近な存在」です。森本氏はこの点に着目した授業を準備してきたのです。
数学との関係をひもとく前に、まずは株式市場を動かす大きな要因の一つである「人間心理」について説明します。「株式市場は人間心理が動かしており、その心理はあらゆる媒体からの情報によって動いている」と話します。信頼できる情報源の一つとして日経電子版を通じた情報取得の必要性についても言及しました。
そして話題は数学に関連したトピックに進みます。人間の心理だけでは説明しきれない株価の動きの要因の1つに「数学を用いた分析」が存在していると説明しました。

数学を実践的に プロが教える株価分析
数学を用いた分析の例として、株式投資や取引に用いられる「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」という二つの手法に触れました。ファンダメンタルズとは、「経済活動状況を示す基礎的な要因」を意味します。つまり、資産や利益、キャッシュフローといった企業の決算書類に書かれている内容を読み解く手法です。
ファンダメンタルズ分析には多くの計算を用います。例えば、企業の財務状態に対して株価が割高か割安かを評価する「PBR(株価純資産倍率)」という指標があります。すべての資産(総資産)から負債を差し引いた「純資産」を企業が発行するすべての株式(発行済み株式総数)で割った「1株あたり純資産」で株価を割って求めます。この数値が「1倍」になるとその企業が今解散したら手元に残る価値(解散価値)と株価が同じ水準、1倍を下回れば株価が「割安だ」と判断されます。
このほか授業では実際の日本の大手企業の財務状況や業績を例にしながら、利益の側面から株価を評価する方法など、具体的なファンダメンタルズ分析のやり方についても解説しました。
「テクニカル分析」はまったく違う角度からアプローチする手法です。株価チャートの形状の特徴をとらえ、過去の経験則などからこの先にどのように値動きするかを予想します。株価の周期性を解析する「エンベロープ分析」では、一定期間の株価の平均値を逐次更新していく「移動平均」を使って株式の売買に適したタイミングを図ります。一定期間の値幅を比べて相場の過熱感を図る「RSI分析」など、株価の分析に使われる数学の役割を紹介しました。
森本氏は「数学」が投資家の武器となると強調します。特に「平均」や累乗計算をして求める「複利」、そして「分散」といった数学の項目を投資では活用できると話します。初めて聴く、リアルで具体的な投資の話に、生徒らは真剣な顔つきで耳を傾け、メモに筆を走らせる姿があちこちで見られました。
すべての学びは未来に繋がる 生徒の心に残る時間に
「この世界に無駄な知識はない」
授業の最後に映し出されたスライドに映し出された言葉です。

森本氏が金融の最前線で仕事をしてきた経験から、数学はもちろん、これまで学んできたあらゆる知識の積み重ねが仕事に役立ったことを、生徒に伝えたいという想いが込められていました。森本氏の熱い言葉に、生徒たちの表情は一段と引き締まっていました。
森本氏は今回の授業を通じて、生徒の知的好奇心の高さが特に印象的だったといいます。「数学と投資の話を本格的に始めた瞬間、生徒の目の色が変わるのを感じ取れた。問いかけへの反応の速さは類を見ないもので、意見を求めた際には発想力のある鋭い回答が返ってきて、とてもレベルの高い授業ができた」と振り返りました。
授業後の生徒に話を聞くと、「なんとなく気になっていた経済や金融のリアルな世界を覗くことができた。数学が色んなところで使われていて、少し意外な印象だった」と率直な感想を話してくれました。また、「『無駄な知識はない』という最後の話も強く印象に残った。今勉強していることが将来に繋がっていくんだということを再認識できて、とてもいい機会になった」と話してくれました。

今回、授業の実施にあたっては、東大寺学園と大和証券、そして日本経済新聞社の担当者がサポート役となり、三位一体で完全オリジナルの授業を作り上げていきました。
担当した社会科の前嶋匠先生は「経済の第一線で働く人の意見を聞く場を設けられたことに、非常に満足している。数学の好きな生徒が多いことなどを事前に伝え、東大寺学園の生徒にあったレベルの高い、そしてかなり内容の充実した授業をしてもらうことができた」と振り返りました。
中高生にとっては遠い距離にあると思われがちな「金融や経済」のトピックを、普段の学習や興味に引き付けながら、丁寧に理解してもらう機会を提供することができました。日本経済新聞社は、大和証券グループをはじめとしたパートナー企業とともに、「日経電子版 for Education」だからこそできる、中高生に新たな学びの機会の創出をこれからも続けていきます。
大和証券グループ
授業者:大和証券 エクイティ営業部 森本裕貴氏








