インターネットイニシアティブ(IIJ)と日本経済新聞社は2024年11月26日、茨城県立竜ヶ崎第一高等学校の生徒を対象にした共同授業を実施しました。日本で初めて商用インターネットを開始したパイオニアであるIIJの巨大データセンターを見学し、その役割や省エネ対策などを議論しました。そこで浮かび上がった課題。知られざるデータセンターの真実は、「探究」授業を積極的に進める竜ヶ崎第一高校の17人の生徒に大きな学びと刺激を与えました。
国家機密や企業の重要情報も
「皆さんがいるこの場所の詳しい住所や、周辺の建物の特徴はSNS(交流サイト)などに絶対上げないでくださいね」
11月26日午後、今回の授業の全体進行を担当するIIJ広報部の堂前清隆技術担当部長がこう告げると、これからデータセンターを見学する17人の生徒はピンと張りつめた雰囲気に包まれました。IIJ白井データセンター(千葉県白井市)は、2019年に建設されたIIJの国内最大のデータセンターで敷地面積は約40000平方メートル。データセンターはサーバーやルーターなどインターネットを運用するためのIT機器を一か所にあつめて効率よく運用するための専用施設です。企業が持つ膨大な情報や、場合によっては国家機密も保管される重要施設であるため、テロやサイバー攻撃などから守る必要上、位置情報は秘匿されているのです。

呼吸する巨大なサーバー群
施設の心臓部である「サーバールーム」に入るには厳重なセキュリティーを通過しなければなりません。施設内を動き回る人々の「足跡」はすべて中央のオペレーションルームでトラッキング(追跡・記録)されており、「決められた順序で扉を通過していない場合、外に出られなくなる部屋もある」(堂前氏)とのことです。17人は2回にわかれてサーバールームへ。気圧の高いサーバールームから空気が漏れないように、途中の小部屋でいったんドアを閉め、気密を確認してから入室する必要があるためです。
中は予想以上の轟音が響きわたります。「これがサーバーを冷やすファンの音です」(IIJの担当者)。普通の話し声では到底聞こえないため、17人はレシーバーを耳につけて無線で担当者の説明に聞き入りました。広大な室内に、サーバーを収容したラック(棚)の列が延々と続いています。この部屋だけで設備容量は百ラック、サーバ数万台分にあたるとのことです。
建物の外から取り込んだ冷たい空気をサーバが吸い込み、吐き出すときには30~40度まで上昇します。まるで巨大な生き物が呼吸するかのような光景に生徒たちが圧倒されます。

千葉ニュータウンが「情報城下町」に
IIJの加藤佳則センター長は「データセンターの重要な要素の一つが立地です」と話します。会議室にもどった生徒たちに、日経電子版の記事がプロジェクターで示されました。「データセンター林立千葉・印西 外資呼ぶ情報城下町」(2022年3月21日付)。白井市や隣接する印西市は千葉ニュータウンと呼ばれる住宅地で、地盤が固く、電力会社の変電所も近いなど好立地。国内外のIT企業がこぞってデータセンターを建設しています。記事はそのトレンドをいち早く報じていました。
IIJが確保した敷地にはまだ余裕があり、さらにサーバルームを増設する予定です。背景にあるのはうなぎ登りのデータセンター需要です。米オープンAIの「ChatGPT」に代表される生成AIの利用の急拡大や、企業のインターネット・クラウド利用のさらなる拡大のため、既存設備では追い付かなくなっています。IIJにとって需要拡大は望ましいことですが、一つの課題に直面しています。生徒たちに示されたのがもう一つの記事です。
うなぎ登りのデータセンター需要
「データセンターの電力消費2.3倍 生成AI拡大で26年に」(2024年1月28日付)。膨大な計算が必要な生成AIは、これまでと比較にならない電力を消費します。この記事によると、ChatGPTに一回質問して答えを得るのに必要な消費電力量は2.9ワット時、グーグル検索の10倍に相当するとのことです。「このままではデータセンターで消費される電気の半分以上をAIが占めるようになる」(米IBM幹部)との指摘も紹介されています。

IIJでも実験的にAI向けGPUサーバを導入していますが、1台で、従来型のサーバー(2010年比)の40台分の電力(約10キロワット)を消費する計算です。「北海道では電力不足の懸念が起きているし、米国では過去に事故を起こした古い原発の活用まで議論されているのです」(堂前氏)。最近の日経記事が次々と表示され、生徒たちの表情には緊張感が高まってきました。「北海道、データセンター活況の裏で電力不足の懸念」(2024年9月5日付)、「原発に走る巨大テック 電源争奪、日本はついていけるか」(2024年10月23日付)。
独自開発のハイブリッド冷却システム
生徒たちが見学したサーバールームは、IIJが独自開発した空調システムで冷やされています。従来型のデータセンターに比べ、消費電力を40%削減することに成功しました。「直接外気空調」と呼ばれるもので、屋外の涼しい空気を最大限に活用して電気はなるべくファンの動力だけに使うようにして省エネを達成します。簡単なように見えますが、夏冬の寒暖差を考慮したきめ細かい制御が必要です。暑すぎる日は外気と従来型空調を併用し、冬は冷たすぎる外気をサーバーの排熱で和らげて冷却にちょうどいい温度に調整しなければなりません。

生徒を引率する竜ヶ崎第一高校の亀田陽介教諭は「当校は教科を問わずICTを積極的に授業に取り入れており、中でも生徒が自分で問題をつくり、その解決策を探って議論する探究学習は重要」と話します。「ただ、どうしても机上の空論になりがちなところもあり、今回のようにリアルな現場の技術と課題を体感できたことは大きな学びになりました」(亀田教諭)。IIJの最先端のIT設備と、日経電子版の最新記事を使った授業に手ごたえを感じていました。
(続く)
インターネットイニシアティブ(IIJ)
授業者:インターネットイニシアティブ広報部兼テクノロジーユニット 堂前清隆氏基盤エンジニアリング本部 基盤サービス部 加藤佳則氏








