茨城県立竜ヶ崎第一高等学校授業レポート(下)

「データセンターを冷やせ」奇抜なアイデア続出

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茨城県立竜ヶ崎第一高等学校授業レポート(下)

「データセンターを冷やせ」奇抜なアイデア続出

    茨城県立竜ヶ崎第一高等学校の生徒を対象にインターネットイニシアティブ(IIJ)と日本経済新聞社による共同授業。2024年11月26日のデータセンター見学では、生成AIの登場でこれまでない規模の電力がサーバーで消費され、膨大な熱を発することがわかりました。環境負荷を抑えながらこれをどう冷やすか、あるいは熱をどう利用するか。17人の生徒たちは見学後のワークショップで議論し、アイデアを出し合いました。

付箋紙にアイデアを書き込む

 約1時間をかけて広大なデータセンターとその関連設備を見学した17人は、会議室に戻って次のミッションに取り組みました。利用が拡大している生成AIは、1回の問答で通常の検索の10倍の電力がかかります。AI用のGPUサーバー1台で、従来型の40台分の電力を消費する計算です。

 より環境負荷の少ないデータセンターを作るにはどうしたらいいか。それが課題です。17人はAからCの3班にわかれ、各班には大きな模造紙と、色とりどりの付箋紙が配られました。

 「みなさんが思いついたアイデアを付箋紙に書いて貼ってください。なるべく具体的な方法がいいですね。できたら、そのアイデアにどんな問題があるか、こうすればもっと効果があるんじゃないか等々、意見を書いて、周りに貼り付けてみてください」

 しばらく躊躇していた生徒たちですが、授業を進行するIIJの堂前氏が「なんでも大丈夫ですよ。思いついたら書いてみよう」と促すと、めいめいにペンをとりはじめました。

データセンター見学での学びを思い出しながら、アイデアを付箋に書き込む

地元を巻き込んだ名案

 ついさきほど見学した巨大なサーバー群とその冷却システムが脳裏に浮かびます。
「サーバーの排熱は冷やされても40度ぐらいになるでしょ。その熱を何かに使えないかな」
「停電したときの非常用電源はディーゼルエンジンで動かすといっていた。これを燃料電池にしたらどうだろう」
「部屋の照明を消して、窓から明かりを取り入れるようにしたらどうかな」、 「地下は涼しいからデータセンターを地中に作ればいいんじゃない?」

 アイデアが出始めると会議室はにわかに活気があふれだします。出されたさまざまなアイデアの付箋紙の周りには、色とりどりの意見が貼られました。
「40度なら温泉にちょうどいいよね。サウナは無理だけど」
「ガソリンは災害時に調達しにくくなるよね。(燃料電池に使う)水素なら契約しておけば安定供給してもらえる」
「窓を大きくすると、外から覗かれてセキュリティー上問題」
「地下に作るのはいいけど、崩落したらどうするの?拡張もしづらいし」

たくさん出したアイデアのうち、似たものは近くにまとめて発表の準備をする

 アイデアと意見が出つくすと、次は発表の準備です。「発表のしかたは自由ですが、着目したポイントと、期待できる効果、想定される課題などに分けて考えるといいと思いますよ」(堂前氏)

環境負荷とコストのかねあいに悩む

 A班の発表はユニークでした。即座に作ったスライド資料を投影して壇上に立ちます。
「僕たちは排熱に注目しました。サーバーが出した熱を一般家庭に提供します。暖房コストを省けたら地域の人たちも喜ぶし、WinWinの関係になるのじゃないでしょうか。データセンターがあるからこの町に住みたい、と思ってもらえれば町おこしにもなります」

A班は即座に作成したスライドで堂々とプレゼンした

 生徒たちのアイデアに講評を加えるのはIIJの加藤佳則センター長です。
「排熱を温泉などに使うのは、ごみ処理場などでもやっている名案ですが、いかんせんサーバーの排熱は30~40度ですからすぐ冷えてしまって難しい。ただ、町おこしの発想にはなるほど、と思いました。データセンターは外から見ると何のための施設かわかりにくいので、ともすれば『あやしい建物』と思われがちなのです」

 B班は燃料電池説です。「データセンターは災害時の非常用電源が重要です。ディーゼルエンジンを燃料電池に変えて、水素を取り入れて水蒸気を排出すれば環境負荷を抑えられます。災害時に入手しづらくなるガソリンより、水素を優先供給してもらう契約にすれば調達も有利です」

IIJもかつて検討していたあるアイデア

 加藤センター長は需要と供給の原理に立ち戻って説明しました。「たしかにその通りですが、逆に言えば引き合いが多いガソリンは安くなる。需要の少ない水素はやはりコストが高いのです」

B班はチームメンバー1人ずつ発表し、連帯感を見せた

 C班は地中化に着目しました。「データセンターを地下に作れば自然冷却できます。崩落に危険はありますが、立地調査を入念にやればできるはずです」
地中データセンターは北米や北欧などでも例があります。「実はIIJでも一時検討したことがあるのです」と加藤センター長。「もともと鉱山として使われていた候補地があったのですが、検討した結果、ケーブルが長くなりすぎてしまったり、メンテナンスのコストがかかったりするため、断念した経緯があります」

 自分たちの案を企業も検討したことがあると聞いて、生徒たちは沸き立ちます。このほか「サーバーの積み方を工夫すれば排熱を効率よくできるのでは」との提案もあがりましたが、「実は私たちも実験したことがあるのですが、いびつな形になってしまいました」と担当者。正直な打ち明け話が笑いを誘っていました。

C班は付箋を見せながら丁寧にアイデアを説明した

予想外だったITと環境問題の関係

 データセンター見学とワークショップを終えて、ある女子生徒はこんな感想を述べます。
「文系の私は情報と環境問題がこんなに密接なつながりをもっているとは予想もつかなかったので、大変驚かされました。私たちが何か検索したりAIを利用したりする度にサーバーが稼働して膨大な熱が発生していると考えると、今後自分自身のインターネットの使い方も再考せねばならないと思いました」

 あらためて振り返ると、きょう見学したIIJのデータセンターは独自開発した空調システムで消費電力を40%削減しているなど、省エネの最先端技術が随所で発揮されています。ワークショップのアイデアや議論を経て、生徒たちはITインフラと省エネ対策の重要さを身に染みて感じたようです。

インターネットイニシアティブ(IIJ)

授業者:インターネットイニシアティブ広報部兼テクノロジーユニット 堂前清隆氏基盤エンジニアリング本部 基盤サービス部  加藤佳則氏

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