IIJ鈴木会長「世界を視野に。変わっていく勇気を」
インターネットイニシアティブ(IIJ)と日本経済新聞社は2025年5月14日、帝塚山高等学校(奈良市)の生徒を対象にした共同授業を実施しました。IIJの鈴木幸一会長が自ら同校に出向き、170名の生徒と向き合いました。講義後のインタビューをお送りします。
■女子生徒170人との対話、いかがでしたか。
自分が高校に真面目に通わなかったから、女子高生というものを知らないんです。みなさん「ふわっ」とした雰囲気ですね。それは悪いことではなくて、人との距離感も柔らかくて、良い大人になりそう。

■生徒たちの質問はどうでしたか。
いくつかの質問は、少しふんわりしていた感じでしたね。質問が明確でないということは、深刻な悩みというより、漠然とした迷いなのかもしれません。
■会長が16歳のころと比べていかがですか
高校2年生のときに、アメリカのケネディ元大統領が暗殺されました。明け方のラジオのニュースで知った時はショックでしたね。その後アメリカはベトナム戦争に深入りすることになる。そんな不安な時代で、どーんと重く沈み込むようなシリアスな心境。ただ、それがインターネットへの興味につながったのかもしれないですね。いまの若い人たちは、そのような漠然とした重さや暗さを感じることはないのかな。それはそれで羨ましいと思うけどね。

■当時の若者にくらべて恵まれているのでしょうか
今もウクライナやガザへの侵攻など、シリアスな状況が次々と生じる時代だと思います。戦後すぐに米軍が進駐していた横浜に生まれた私もそんな世代ですが、世界や日本の動きに向き合ったときの距離感が、今の高校生とは違うのかもしれません。ただ、(今の高校生の)軽さは、良さじゃないかな。余計な重さがなく、かえってその方が良いのだろうと思います。
■今の若い人たちは、失敗を恐れるというか、きれいに生きていこうとする傾向がありますね。
失敗する前に考えちゃうのかな。若気の至りで、知らないうちに失敗しちゃった、ということがないのか。それはそれで、かえって大変じゃないかなと思いますが。僕らは、失敗が当たり前みたいな時代に育ちましたから。生徒たちがどうこうというより、今はそういう時代なんだよね。時代が子どもたちの感性を作るから。

■あの若い世代がこれから次世代を担っていくわけですが、いかがですか。
ああいう明るさみたいなものを世界に広げていける日本になればいいと思いますね。ただ、そこは簡単じゃない。これからどのように勇気をもって挑戦していけるか。勇気を持たないと変わっていかないし、新しいことはいつもそうです。そこはちょっと頑張ってほしいですね。
■ITの世界ではアメリカを追いかけている日本ですが、どんな方向に進めばよいですか。
インターネットはグローバルなものなのに、日本の中でやっている感じはしますね。韓国のようにコンテンツで世界に対抗するという点でもすこし遅れをとっていますしね。iPhoneの部品はほとんどが日本製です。アップルのスティーブ・ジョブズ氏は、デザインにとてもうるさかった。日本企業はそれにこたえる金属加工の技術を持っていた。それでもやはり製造業の範疇なんですね。ITの世界が非常に大きな世界だっていう認識はまだ甘いと思う。

昔、ソニーのウォークマンに「なんで通信機能を付けないんですか」と提案したことがあった。さんざん言ったけど、やらなかったですね。そのうちにiPhoneに取られてしまった。シャープのザウルス(携帯情報端末)もそうですね。みな、当時のトップに言ったけどやらなかった。課長クラスぐらいの人はやりたがるんですが、それが実現しない。新しいことに対して遅れをとってきたということの問題がいまだに解決されてないと思います。
■今はだいぶ変わってきて、新しいものに挑戦する雰囲気は出てきていませんか。
そうしないと食っていけないから変わってきたというか。変わらざるを得なかったというところでしょうかね。
IIJは1999年にニューヨークのナスダック市場に上場しました。日本の株式市場を飛び越して米国に上場したので話題になりました。このとき本当は本社をニューヨークに移そうと思ったんです。なかなかコンセンサスを得られなくて、日本にいたままになりました。アメリカの会社になっていれば、また違うスケールの会社になったかもしれない。

■それも踏まえて、次世代へのエール、メッセージをお願いします。
世界で何が起こっているのか、世界がどうなっていくのか、視野を広げて体験なり、勉強なりしていってほしいと思います。いまの日本のベンチャー企業を見ていても、志が小さいですよね。10億円、20億円儲ければいいという話ではなくて、グローバルで評価されるような人が出てくるといいなと思います。今日の生徒たちの中から出てくることを期待しています。
インターネットイニシアティブ(IIJ)
授業者:インターネットイニシアティブ代表取締役 会長執行役員 鈴木幸一氏








