城北中学校授業レポート(前編)

電力と熱との闘い 巨大データセンターで考える

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城北中学校授業レポート(前編)

インターネットイニシアティブ(IIJ)と日本経済新聞社は2026年2月24日、城北中学校(東京都板橋区)の生徒を対象に共同授業を実施しました。日本で初めて商用インターネットを開始したIIJの「白井データセンターキャンパス」(千葉県白井市)を訪れ、インターネットを支えるデータセンターの役割や、膨大な電力消費と熱処理といった課題について学びました。事前学習で得た知識をもとに実際の施設を見学し、デジタル社会の基盤を体感した20人の生徒たち。その様子をルポ形式でお伝えします。

高い壁に囲まれた巨大な要塞

季節外れの暖かさに包まれた2月24日の昼すぎ。城北中学校の20人の生徒たちはそれぞれ最寄り駅に集まった。目的地は、日本で初めて商用インターネットを開始した企業、インターネットイニシアティブ(IIJ)の巨大施設「白井データセンターキャンパス」だ。

巨大な要塞のようなIIJ白井データセンターキャンパスの外観

タクシーが敷地の近くに差しかかると、生徒たちの視界に飛び込んできたのは広い敷地を囲むように長く続く壁に囲まれた壁に囲まれた建物だった。白い外壁が続くその姿は、まるで巨大な要塞のようにも見える。

「ここが……データセンター?」

誰かが小さくつぶやいた。
 

設備拡張のため3期棟の建設も進んでいる

東京ドームとほぼ同じ広さの敷地の一角では、3期棟の建設工事の音が響く。生徒たちはそれを横目に、緊張した面持ちで受付へと足を進めた。セキュリティは想像以上に厳しい。受付ではセンターの担当者が、生徒一人ひとりの名前を事前登録の名簿で確認し、生徒手帳の顔写真と丁寧に照合していく。確認が終わるとゲートへ案内される。

「いよいよ中に入るんだ」

生徒たちの表情には、少しの緊張と大きな期待が入り混じっていた。

SNSへの投稿は禁止!

「皆さんにお願いがあります。この場所が特定できるような情報は、SNSなどに絶対に投稿しないでください」

堂前氏のオリエンテーションを聞く生徒たち

見学前のオリエンテーションルームでIIJ広報部・技術統括部長の堂前清隆氏が、生徒たちを前に口を開いた。多くのデータセンターは所在地の詳細を公開していない。テロやサイバー攻撃から守るためだ。生徒たちの表情も一段と引き締まる。

続いて堂前氏は、私たちが日常的に使っているスマートフォンの動画視聴を例に、データがどのようにサーバーを経由して届くのかを説明した。サーバーとは何か、CPUやハードディスクの役割は何か——。

生徒たちの様子を見ると、基本知識はすでに頭に入っているようだ。この見学に先立ち、綿密な事前学習を行っていた。サーバーやCPU、メモリ、空冷方式、無停電電源装置(UPS)に及ぶ21のキーワードを徹底的に学習。さらに日本経済新聞電子版の関連記事を読み込み、データセンターの社会的役割についても考察してきた。

驚きの電力消費量

電力消費の実験で計測器に見入る生徒

それなら、と言わんばかりに堂前氏が問いかけた。

「サーバーはとても高性能ですが、その分、電力もかなり消費します。どれくらいのワット数なのか、想像できますか?」

電力消費——。そもそもノートパソコンが何ワットで動いているかさえ、考えたことがない生徒がほとんどだった。堂前氏は、机の上に小さなサーバー機を置いた。CPUが1つだけ搭載された簡易サーバーだ。スイッチを入れる。

「ブォォォォォン」と室内に轟音が響く。横に置かれていた電力計の数値はみるみる上昇し、やがて500ワットを示した。家庭のこたつ1台分とほぼ同じ電力だという。

「えっ、これだけで?」と驚きの声が上がる。

たった1つのCPUでこれほどの電力。そしてこの騒音。もし何万台ものサーバーが並ぶ場所に入ったら——。生徒たちは、事前学習ではわからないデータセンターという施設の現実を実感したようだった。

データセンターの「心臓部」

いよいよ施設見学が始まる。データセンター内部は機械音が激しいため、生徒たちはイヤホン付きレシーバーをつけて案内係の後に続いた。

オペレーションセンターでメモをとる

データセンターの「心臓部」と呼ばれるオペレーションルームには巨大なモニターが並び、センター内のあらゆる情報が表示されている。各サーバールームの温度や湿度、電力の状況、セキュリティ監視。すべてがここで管理されている。地震などの災害が起きた場合でも、A系統・B系統と複数の電源ラインを確保し、24時間体制で運用を守る。

続いて向かったのはサーバールームの裏側にある空調設備機械室。ここからは簡単には入れない。まず10人ほどが小さなエントランスルーム(前室)に入る。扉を閉めると、完全な密室になる。

10人が完全に入室してから、次の10人が同じ手順を踏む。こうした手間をかけてでも、室内の気圧や温度を一定に保っている。

サーバーの裏側には排熱設備が

「ここではサーバーの熱を冷やすために外気を取り込み、風を送っています。サーバーを通った空気は約40度まで上昇します」

イヤホンから説明が聞こえる。サーバーが発する熱を効率よく適度に冷やすことはデータセンターの施設を安定させるカギといえる。

生徒の一人が手を挙げた。

「僕たちがこの部屋に入ったことで、気温は変わりませんか?」

「おっしゃる通り! もちろん影響があります。この部屋には温度・湿度の自動制御を行うシステムがあり、原則として自動的に適温が保たれています。そのうえで、決められた温度湿度の範囲を超えていないか、先程みてもらったコントロールセンターで、自動的な監視と人による監視を行なっています。」

サーバー同士が会話?

そして、いよいよ本丸であるサーバールーム本体へ。

気密ルームの扉が静かに閉まり、サーバールームへ入るには顔認証とカードキーによる認証が行われる二重管理となっている。厳重なチェックを済ませようやく次の扉が開く。

次のドアが開いた瞬間、耳に届く音の質が、明らかに変わった。先ほどの冷却設備の低い唸りとは違う、もう一段高い機械音が空間全体に満ちている。無数のファンが回り続ける音だ。

「すごい」――。生徒たちは思わず足を止めた。まるでSF映画のセットのようだ。

巨大な白いラックが、整然と一直線に延々と終わりなく並んでいるように見える。ラックの中におさめられたサーバーは数万台にも及ぶという。建物の広さは非公開だが、感覚的には学校の体育館がすっぽり入るほどはありそうだ。
 

多くのラックが並ぶサーバールーム

担当者が一つのラックの扉を開くと、中には、黒いサーバーが約30台、きっちりと縦に積まれ、光ファイバーなど、無数のネットワークケーブルが差し込まれている。青や緑のLEDランプが絶えず点滅していた。

「まるで会話しているみたいだね」

だれかがつぶやく。たしかにサーバー同士が高速で言葉を交わしているかのようにも見える。

メモを取り、質問の嵐

生徒たちは身を乗り出すようにしてラックを覗き込み、それぞれが気づいたことをメモに書き留めていく。何万台ものサーバーが稼働しているはずなのに、室内の空気は意外なほど涼しい。温度はおそらく23℃前後だろうか。不快な熱気はまったく感じない。見学していた生徒の一人が手を挙げた。

「具体的には、どのようにサーバーを冷却しているのですか?」

担当者は開かれたラックの内部を指差す。

「このあたりですね。 ラックの全面から冷たい空気を吸ってラック背面に噴出していて、ラック背面に出た熱い空気は、天井方向に排出。気圧差も効果もありますが、熱い空気なので、対流の効果もあるのです」

別の生徒が続けて尋ねた。

「サーバーの監視は、24時間体制なんですか?」
「もちろんです。24時間365日、止まることはありません」
「それだと、休む暇がないですね……」
「そこはローテーションです。みんなちゃんと休みを取りながら働いていますよ」

データセンターの本質を体感

城北中学校情報科の平栁秀教諭によると、生徒たちは今回の見学のためにかなり綿密な事前学習をしてきたという。21のキーワードをQ&A形式で整理。さらに「データセンターと社会」というテーマで、日本経済新聞電子版の記事を読み、利点や課題を考察してきた。

「生徒たちの目の輝きがこれまでと違った」と語る平栁教諭(中央)

生成AIの普及によるデータセンター需要の急増や半導体企業エヌビディアの動き。さらにはOpenAIのサム・アルトマンCEOの発言まで考察する、中学生とは思えないほどの内容だった。

その準備があったからこそ、実際の施設を目の前にしたときの理解は一気に深まった。データセンターの本質。それは膨大な電力と熱との戦いでもある。

「なかなか実際に見ることのできないデータセンターに来ることができました。この経験はのちに体験として生きてくるに違いない。今日の生徒たちの目の輝きが、これまでとは違っていました」

見学を終えた後、平栁教諭はこう話す。事前学習で積み重ねてきた知識が、巨大な現場の迫力とともに結びついた一日だった。

(続く)

インターネットイニシアティブ(IIJ)

授業者:インターネットイニシアティブ広報部兼テクノロジーユニット 堂前清隆氏
基盤エンジニアリング本部 基盤サービス部  加藤佳則氏

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