心からの好きにひたむき情熱を注ぐ「推し活」。アイドル、アニメ、スポーツなど「推し」のジャンルが広がるなかで、ニュース・新聞を「推す」のが高校3年生の髙浪天冴(たかなみ てんご)さん。あらゆる情報に無料でアクセスできるなかで、のめり込むのは有料のメディアサービス。毎月のサブスクリプション(定額課金)にかける支出は月5万近くになる。アルバイトや株式投資のリターンでやりくりするが、収入が上回れば「プラス」という自分流のルールで楽しむ。
世界のビジネスニュースとともに送る学生生活

角川ドワンゴ学園S高等学校(以下、S高)3年の髙浪さんは、横浜キャンパス(横浜市)に通う。午前8時半ごろに起き、自宅から電車通学している。東京株式市場の寄り付きのタイミングである。学校では「投資部」にも所属しており、日経電子版で「国内株概況」の「先読み株式相場」や「今日の株価材料」をスマホで欠かさずチェックしている。株価を左右する為替や金利の動き、国際情勢、政局などから、その日のマーケット展望を占う記事に目を通し、売り買いの材料となるか企業ニュースもあわせて確認している。
自習、休み時間には「MacBook」を開き、速報やコラムを読む。全国紙のオンライン版も使っているが、ビジネスニュースにどうしても興味を持つ。日経電子版で企業の重要ニュースを分析した「ビジネスTODAY」は、経営戦略やライバル企業の動き、業界の潮流をつかむことができる。読む頻度が多いコラムだ。

日本の株式市場の大引け後に、学校からアルバイト先に向かう。「スクランブル・フラッシュ」はその日の株式市場の全体の動きやトピックをほぼリアルタイムでまとめており、市場関係者の心理をはじめ見逃せない情報を解説する。市場がこれからも楽観的かどうか。そんなムードを知るのに欠かせない。約5時間のバイトを終えて、ようやく帰宅。日をまたぐ時間帯にほぼ就寝しているが、ニューヨークで取引が始まった株式相場の記事を見てからだ。
世界でリアルタイムで起きているニュースを意識しながら学生生活を過ごしている。「アイドル、野球やサッカーといったスポーツ観戦など、みんなも趣味や推しがあるはず。それが僕にとっては新聞」(髙浪さん)。自宅に届く新聞を幼いころから読み親しむようになり、そのまま膨らんでいった好奇心を満たすため、有料のメディアサービスに手を伸ばすようになったという。今ではメディアに触れるのは1日のうち4時間以上で、ダイナミックに動く世界とつながり続ける。

毎月サブスク支払いは約5万円、「バイト+投資>ガチ課金」に価値
「ほぼバイト代が消えていく」(髙浪さん)。全国紙では日経電子版、朝日新聞、産経新聞のデジタル版を購読している。さらに日経ビジネス、主要メディアの記事を検索できるデータベース「日経テレコン」、個人投資家向けの専門情報サービス、「Qr1 Personal」も契約し、5万円近くの「推し活」ということになる。アルバイト代、投資実績が上回ってさえいれば、金銭的には首が回らなくなることを避けられる。髙浪さんは運用実績から投資部のエースとしての顔を持つが、情報収集は損得だけではない。

陰謀論、フェイクニュースを見極める情報リテラシー
Yahoo!ニュース、X(旧ツイッター)、Instagramで流れている情報にも触れるが、お金を払うからこそ得られる情報の価値を実感している。
例えば、陰謀論。明らかなフェイクニュースもあるが、真偽があいまいなストーリーや画像が巧妙に流されている。一部の国による情報工作も水面下で繰り広げられていることも明らかだ。髙浪さんの目にとまったのは、「沖縄独立」煽る偽投稿拡散 背後に約200の中国工作アカウント(2024年10月3日)。日本の世論分断を狙った「情報工作アカウント」の実態を検証したニュースだ。「報道機関がしっかり取材をし、その裏側も掘り下げている」(髙浪さん)。質が高いニュースに接して情報武装することで、怪しい情報を見極めて、飛びつかない備えになるという。
7月の参院選でも争点として盛り上がった「外国人問題」。Xに扇動的な投稿が多くなるにつれ、それまで興味を示さなかった友人が急に政治を話題にするようになっていった。SNS発のポピュリズム(大衆迎合主義)的な聞こえがいい主張を、疑わず受けいれる姿に違和感もあったという。ニュースに距離を置いている友人ほど、偽情報やデマにはまりやすいというリスクも肌で感じた。「積極的に調査していくことが、新聞社をはじめとするメディアに求められている」(髙浪さん)。「推し活」といえども、自分の考えを貫き情報リテラシーを磨いている。
小論文対策には生成AIをユニーク活用
髙浪さんは来春の受験に向けて、小論文対策で「推し活」をユニークに活用する。日経電子版の生成AI機能「Ask! NIKKEI」もそのひとつだ。ニュースやキーワードなどの疑問を質問すると、生成AIが回答をまとめてアウトプットしてくれる。生成の基になるデータベースは過去の記事を使っており、引用した記事もあわせて示す。髙浪さんは回答文よりも、参照する記事の一覧に注目する。例えば、「地方活性化について教えて」と入力すると、小論文でも使えそうなテキストを表示する。これを解答例として学びにするのではなく、記事をたどっていくことでテーマに関連した情報の”引き出し”を増やしている。

いまの情報がすぐ先のキャリアを動かす
生きた情報が日常とも結びつく。今夏を襲った猛暑は北海道でエアコン設置の人材不足を招いたことが話題となるなど、業務用も含めて冷凍・冷蔵に関連した施工・修理需要が伸びた。アルバイト先のコンビニエンスストアで冷蔵庫が故障した際、駆けつけたメーカーの担当者に「最近、エアコンの修理待ちがたいへんだと知りました」と一声かけ、コミュニケーションのきっかけになった。
店長らと何気なく話題になったのが、コンビニで市販薬の購入可能に、改正薬機法が成立 ローソンなど歓迎(2025年5月14日)という薬剤師などいない店舗でも一般医療品を扱えるようになる規制緩和だ。早朝や深夜帯の購入が可能になりコンビニの利便性が高まり、薬剤師不足、医薬品の供給不安を抱える製薬業界に与える影響も大きい。経済のリアルを体感しながら学びの幅が広がる。

大学では経済学を進路として希望しており、マーケットに関連した職業に就きたいと考えている。ニュース体験を通じて投資判断をしっかり鍛える。株高による資産効果もあって、中古マンションに株高波及、都心で1.7億円超え 新築は供給細る(2025年9月24日)といった記事に関心が向かう。コスト高やインフレの余波を受けて、新築・中古とも住宅価格が高騰する。東京23区では平均でも1億円を突破して過去最高を更新した。活気を取り戻しつつ不動産投資信託(REIT)にもゆくゆくは前向きな姿勢だからこそ、アンテナを巡らせる。学ぶ投資は、損をしないための投資。希望するキャリアはすぐそこ。頼れる情報で道を開く。
インタビューに答えてくれた方
角川ドワンゴ学園S高等学校・3年髙浪天冴さん








